スマホから「イヤホンジャック」が消えつつある意外な理由…いつかは完全になくなってしまうのか?
◆あえてイヤホン端子を残しているスマートフォンも
ただ、現在もイヤホン端子を搭載するスマートフォンはいくつか存在しています。
▼ローエンドスマートフォン
1つは、性能は高くないものの低価格(3万円前後)で購入できるローエンドのスマートフォンです。 ローエンドスマートフォンのターゲットは、日本であれば主に年配の人々、海外であれば低所得者層や新興国の人たちです。有線イヤホンに馴染みがある、あるいは所得的にワイヤレスイヤホンの価格は高いと感じる人たちが多いことから、イヤホン端子の搭載を継続しているものと考えられます。
▼高音質が魅力のスマートフォン
もう1つはサウンドにこだわる人をターゲットにしたスマートフォン。代表例がソニーの「Xperia」シリーズです。ワイヤレスイヤホンで高音質を実現するさまざまな技術が開発され、ハイレゾ音源もワイヤレスで楽しめるようになった昨今ではありますが、それでも音質を非常に重視する人は有線のイヤホンを好む傾向にあります。 それだけにXperiaシリーズは、最上位モデル「Xperia 1」シリーズでもイヤホン端子を搭載し、イヤホン接続時のサウンド性能向上を図っているのです。 実はXperia 1シリーズも、2019年発売の初代「Xperia 1」で一度イヤホン端子を廃止しました。しかしサウンドにこだわるユーザーから復活を求める声が多く、次機種の「Xperia 1 II」以降は必ず搭載しています。
▼ゲーミングスマートフォン
もう1つ、イヤホン端子を搭載することが多いのがゲーミングスマートフォンです。実際、エイスーステック・コンピューター(ASUS)の「ROG Phone 8」シリーズや、ヌビアテクノロジーの「REDMAGIC 9S Pro」など、日本でも販売されている最新のゲーミングスマートフォンはいずれもイヤホン端子を搭載しています。 その理由は音が遅れて届く“遅延”にあります。無線で通信するワイヤレスイヤホンは、有線接続のイヤホンと比べるとどうしても遅延が生じやすいものです。音楽に合わせて操作をするリズムゲームなどのように、コンマ1秒で勝負が決まるゲームプレイではその遅延が致命的なミスにつながりかねません。 そこでゲーミングスマートフォンでは遅延が少ない有線イヤホンが接続できるよう、イヤホン端子を装備してゲーミングにこだわる人のニーズに応えているのです。 有線イヤホンに一定のニーズがある限り、スマートフォンからイヤホン端子が完全に消えてしまうとは考えにくいでしょう。ただ一方で、ワイヤレスイヤホンを利用する傾向は確実に強まっているだけに、イヤホン端子を搭載したスマートフォンが減少していく流れも大きく変わらないように思えます。
佐野 正弘( 携帯電話・スマートフォンガイド)