【インタビュー】オリックス・若月健矢 決意の声「重圧を打ち消すためにも」
勝つ難しさを再確認
オリックス・若月健矢
屋台骨を支える男の決意は力強い。西武からFA加入した森友哉と捕手併用も、2度のサヨナラ打を放つなど、攻守で存在感を示した女房役は、シーズン中にFA権を取得するも早々に残留を表明。チームの勝利に貢献し続ける意思表示は、むろん、2年連続日本一を目指す短期決戦でもプレーで示していく。大きな重圧を打ち消すための方策も肝に銘じる男が、“秋の決戦”のキーパーソンだ。 取材・構成=鶴田成秀 写真=佐藤真一 独走Vはあくまで結果に過ぎない。長いシーズンは苦闘の連続だった。「自分との勝負」と言って幕を開けた今季、勝負の夏を前にした7月、攻守での奮闘は、あらゆる思いが詰まったものだ。 ──全日程終了後だった昨季までの2年間とは異なり、今季は、マジックを点灯させ、試合に勝利して優勝を決めましたが、優勝の実感も“違い”を感じますか。 若月 個人的にも過去2年よりも試合に出たシーズンだったので(2021、22年はともに68試合、今季V決定時まで87試合出場)やりがいもありましたからね。過去2年よりも、チームの力になれたのかなって思っています。 ──リーグ覇者として他球団から標的と見られる中、さらに3連覇が期待される声もあり、重圧もあったと思います。 若月 いやあ~重圧はなかったですよ。勝たないといけないとか、優勝しないといけないなんて感じたこともなかったですし。ただ、チームというよりも由伸(山本由伸)が先発する日は、プレッシャーがありましたけど(笑)。抑えて当たり前みたいな空気を感じるというか、変なプレッシャーがありますからね。 ──目の前の試合に挑むだけだった、と。 若月 本当にそうです。1試合1試合に必死でしたから。そもそも、こんなにマスクをかぶれるとは思っていなかったし、僕自身も試合に出るために必死だった。周りの眼とか声とか、そういう邪念がなく必死に1試合を戦っていったら、いつの間にかマジックが点いていた感じなんですよ。そこから、どんどん(マジックが)減っていって。初めてマジックが点きましたけど、マジックの数字を見ることも、考えるヒマもなかったんですよね。 ──「こんなにマスクをかぶれるとは」の思いの裏には……。 若月 友哉(森友哉)がFAで来ましたからね。当然、友哉がメインで出るものだと思っていたので。その半面、負けていられないという気持ちもありました。今年に関しては、友哉は1年目。僕のほうがウチ(オリックス)のピッチャーを知っていて当然なので、簡単に負けるわけにはいかない。来年以降は、そのちょっとしたアドバンテージもなくなるので、もっと頑張らないといけないんですけど(笑)。 ──その森選手が7月にケガで離脱した間、若月選手が攻守で存在感を示し、チームもきっちりと貯金をつくったことも大きかったと思います。 若月 友哉は強力な仲間ですし、頼れるチームメートです。友哉に負けてはいられないけど、一緒になってという思いも当然ありました。そんな友哉が抜けたときにチームが負けてしまっては、それこそ悔しいじゃないですか。だから、『やらなきゃいけない』という思いは当然ありました。何より、友哉自身が離脱してしまったことが悔しかったと思うんです。だから、個人としての思いだけではなくて、チームとして『やらなきゃいけない』という思いが強かったので、なんとか頑張れたので良かったなって。 ──昨季までは伏見寅威選手(現日本ハム)、今季は森選手と併用。森選手の離脱期間は連日スタメンマスクでしたが、連戦の苦しさを感じることはありましたか。 若月 いや、意外と逆だったんですよ。1週間に2、3試合より、毎日試合に出たほうが慣れてくるというか、体力的には楽だったんです。(試合に)出たり出なかったりのほうが難しいなって感じました。配球面でも3連戦すべてでマスクをかぶると、(3試合)トータルで考えられたんです。もちろん全部勝ちに行って3連勝を目指しますが、1つ負ければカード勝ち越しを狙って……という感じで。相手バッターの反応もずっと見られるし、例えば、2戦目以降を見据えて初戦にエサを撒くこともできる。やっぱりベンチで見ているのと、キャッチャーボックスからバッターを見るのとでは、感じ方は全然違いますから。ただ、その半面、難しさもありますよ。 ──というのは。 若月 単純に反対の話ですよ。毎日、僕がマスクをかぶっているので、相手だって・・・
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週刊ベースボール