いよいよ開幕!! 今夏の高校野球地方予選はこの「下克上チャレンジ」が熱い!!
今年はどんなドラマが生まれるのか!? 6月22日、北北海道、南北海道、沖縄の3大会から始まった夏の高校野球地方予選。大阪桐蔭、履正社の「ビッグ2」を撃破した春の大阪王者や、あの熱血監督が指導する異色の全寮制公立など、甲子園を目指して下克上に挑む各地の注目校を紹介する! 【写真】甲子園を目指して下克上に挑む注目校 * * * ■ドラマ性抜群の両雄。大院大高&昴学園 今夏、高校野球界の勢力図を塗り替える可能性を秘めたチームがあるのをご存じだろうか。夏の地方大会もついに開幕したが、すでに萌芽の時を迎えつつある魅惑の高校を紹介しよう。 全国の高校野球ファンから熱い視線を注がれているのは、大阪学院大高(大阪)だ。大阪といえば大阪桐蔭と履正社による「2強時代」が長く続いている。だが、今春の大阪大会で大阪学院大高は2強を撃破し、初優勝を飾った。 原動力になったのは、チームの主将であり、今秋のドラフト候補にも挙がる今坂幸暉だ。右投げ左打ちの遊撃手である今坂は運動能力が抜群で、躍動感のある走攻守は目を惹く。ほかにも強肩強打の捕手・志水那優らタレントがそろい、春の大阪王者になった実力は決してフロックではない。 そして、チームを率いる指揮官は実にユニークだ。辻盛英一監督は大手保険会社勤務時代に13年連続で売り上げナンバーワンを記録した伝説の営業マン。現在は保険代理店を経営して安定した業績を上げつつ、営業マン向けのセミナーも実施している。一流ビジネスマンとしての顔を持ちながら、高校野球監督を務める変わり種なのだ。 辻盛監督はチームが低迷していた昨春に監督に就任すると、わずか1年でチームを春の大阪制覇へと導いている。野球部員の髪型は自由。スタッフは外部コーチを含めると10人近くになるが、グラウンドに怒号が響くことはない。選手との対話を重視しており、選手はおしなべてコミュニケーション能力が高い。 チームとしての目標は大阪桐蔭や履正社に勝つことではなく、あくまでも「日本一」。今春の近畿大会では初戦で敗れたが、有望な1年生を「1番・三塁」で起用するなど、新戦力の台頭も見られた。 また、辻盛監督が「この夏に140キロ台後半も投げられるのでは」とひそかに期待する「投手・今坂」というオプションが発動するかもしれない。大阪学院大高の快進撃が夏も続けば、高校野球界全体を揺るがす激震になるはずだ。 三重でも新興勢力がステップを踏んでいる。今春の三重大会で創部初の3位に食い込んだ昴学園である。私立高校のような学校名だが、全国でも珍しい全寮制の公立高校。2007年から16年連続で三重大会初戦敗退(独自大会を含む)という弱小校で、0-29(5回コールド)で敗れた年もある。 そんなチームを躍進させたのが、東 拓司監督だ。前任校の白山では10年連続三重大会初戦敗退、学業面でもコンプレックスを抱く生徒を根気強く指導し、18年夏の甲子園出場に導いた。その奇跡的な快進撃は書籍化され、TBSの日曜劇場『下剋上球児』の原案として採用された。 その「下剋上球児・第二章」が着実に進行している。東監督が昨春に昴学園へと異動すると、同年夏には17年ぶりに三重大会勝利を経験。今春は3回戦で名門・三重を相手に10-3でコールド勝ちを収め、3位決定戦ではセンバツ甲子園帰りの宇治山田商を7-4で撃破した。 昴学園の校舎がある多気郡大台町は町全域がユネスコエコパークに登録されており、日本三大峡谷に数えられる大杉谷や清流日本一に選ばれた宮川など自然豊かな環境だ。 県外から越境入学してくる生徒も多いが、地域には後援組織「昴学園野球部を応援する会」が立ち上がるなど、町を挙げて野球部を応援するムードが醸成されている。 東監督と指導タッグを組むのは、ベテラン指導者の冨山悦敬コーチ。18年の夏の三重大会決勝を戦った松阪商の元監督である。監督として初の甲子園出場を阻まれた東監督とコンビを組み、再び下克上を狙っている。そのドラマ性も白眉だろう。