RWD「最初で最後」の600馬力超え アウディR8 V10 GTへ試乗 ストレスフリーこそ最大の偉業
生産が終了したR8 最後を飾ったV10 GT RWD
2024年6月、モータースポーツで最も過酷なレースの1つ、ニュルブルクリンク24時間でアウディR8 LMS GT3エボIIが優勝した。濃霧による中断という結果ではあったが、そのベースモデルの生産終了をお伝えするのは、なんとも心苦しい。 【写真】ストレスフリーが最大の偉業 アウディR8 V10 GT RWD 競合スポーツモデル 生産終了のTT RSも (145枚) ポルシェやBMW、メルセデスAMG、フェラーリなどと比べても、R8の優しいロードマナーは素晴らしかった。だがアウディは潔く、既に歴史上のモデルとして気持ちを切り替えたようだ。 2024年3月に、ベガス・イエローに塗られた最後のR8 パフォーマンス・クワトロが、ドイツ・シュトゥットガルト近郊のベリンガー・ヘーフェ工場からラインオフした。類まれなミドシップ・スーパーカーの系譜は、18年間で終止符が打たれた。 ポルシェは、911のハイブリッド化へ踏み出した。R8の兄弟といえるランボルギーニ・ウラカンも、V8エンジン・ハイブリッドの次世代へ生まれ変わろうとしている。しかしアウディは、電動パワートレインへ注力し、内燃エンジンからの撤退を進めている。 もしR8の次世代が登場するなら、それは2基か3基の電気モーターを搭載しているはず。大きな駆動用バッテリーも。 アウディは、そんな2代目R8の最終仕様として、V10 GT RWDを2022年にリリースしていた。生産数は333台の限定。もちろん完売済みで、カーボンファイバー製のセンターコンソールに、シリアルナンバーが記されている。
RWD最初で最後の600馬力超え 見た目も精悍
ただし、歴代のR8で最強というわけではない。ドイツのチューナー、ABT(アプト)が、XGTという超硬派なモデルを提供している。これは、公道用のGT2マシンといっていいだろう。 それでも、アウディ自ら手掛けた例としては、頂点に位置する1台といえる。後輪駆動のR8としては最初で最後となったが、最高出力は600馬力超えの620psに達し、最大トルクも57.5kg-mへ上昇していた。通常のV10 RWDは、570psと56.0kg-mだ。 7速デュアルクラッチATも、ショートレシオで再調整。より鋭い直線加速を叶えつつ、一層エキサイティングに5.2L V10エンジンを堪能できる。通常のR8では、2速で8700rpmのレッドラインまで引っ張ると、120km/h以上に達してしまうのだ。 またトラクション・コントロールには、トルクリア・モードを追加。アルカンターラ巻きのステアリングホイールへ追加されたダイヤルを回せば、電子アシストの強度を7段階から選択できた。 R8 V10 GT RWDのアルミホイールは、専用の鍛造品。ブレーキはカーボンセラミック・ディスクで、車高調整式のコイルオーバーキットがオプションで選べた。 ボディキットもかなりアグレッシブ。機能美溢れるR8が、さらに精悍に仕立てられていた。最後に、再びこのステアリングホイールを握ってみよう。