日本馬遠征&ジャパンCの歴史を“お宝”とともにご紹介
日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」は美浦取材班の万哲こと小田哲也(56)が担当。東京競馬場内のJRA競馬博物館を取り上げる。現在は特別展「2023年ロンジンワールドベストレース受賞記念 世界一までの蹄跡」を開催中。同博物館で学芸員の秋永和彦さんに見どころなどを聞いた。 91年に開館したJRA競馬博物館は、東京競馬場の東門を入ってすぐの場所にある。競馬場内とは一線を画し、静かで落ち着いた館内。学術の香りが漂っている。同博物館で学芸員の秋永和彦さんは「毎年、春の東京(4月下旬)と秋の東京(10月上旬)の開幕週に合わせて、新たな特別展が始まるのですが、分かっている方も多いのでしょう。その週は開門の時には列ができるんです」と語る。競馬を愛する人にはたまらないスポットなのだろう。 現在、特別展「2023年ロンジンワールドベストレース受賞記念 世界一までの蹄跡」(来年2月24日まで)が開催中。IFHA(国際競馬統括機関連盟)が発表した23年の世界トップ100G1競走において、昨年の第43回ジャパンカップが「2023年ロンジンワールドベストレース」に輝いたのを記念した特別展。日本馬の海外遠征の歴史と「世界に通用する強い馬づくり」を目指すべく81年に創設されたジャパンカップの歴史が、映像や展示パネルなどで紹介されている。秋永さんは「ワールドベストレースを受賞したのを競馬ファンの方々に、より知っていただければと考えて(ジャパンC開催の)5回東京で展示を企画してきました。新たに関係者に提供していただいた記念品も多数ありますので」と来場を呼びかける。 第1回ジャパンC優勝メアジードーツの馬主服と騎乗したC・アスムッセンの実使用ムチ。日本馬として初めてジャパンCを制した84年カツラギエースの馬主服。米国のBCフィリー&メアターフを制したラヴズオンリーユー、BCディスタフを制したマルシュロレーヌの優勝賞品など、他にも貴重な品々が多数展示されている。 同時に行われている特別展「JRA70周年記念 タイムトリップ to 1954」も競馬の歴史を知る上では興味深い。特に「馬券発売の歴史」は見入るファンが多かった。馬券発売が締め切られると、そろばんによって集計…。今思えば大変な時代だと思う。戦後も関西やローカル中心に行われていた「繋駕(けいが)速歩競走」の映像コーナーもかなり貴重。 競馬博物館は広い。発馬機を使ってゲートを開く発走委員(スターター)体験は根強い人気。三大始祖から日本ダービー馬の血統を学べるサイアーライン、顕彰馬、東京競馬場の歴史など丸1日楽しめる。今年の東京競馬場のラストを飾るジャパンCも迫ってきた。その前に、ぜひ訪れてみては?日本馬の世界への思いが深まることで、レースの興味も倍増するはずです。 ◇小田 哲也 1967年生まれ、埼玉県出身の56歳。92年スポニチ入社。校閲部、仙台支局。現レース部では競輪、ボートレースも担当し、01年に中央競馬担当に戻る。グリーンチャンネル「中央競馬全レース中継」のパドック解説を担当中。 ▼JRA競馬博物館 入館料は無料(東京競馬開催日は競馬場への入場料は必要)。今月9、16、23日の午前11時~11時30分(先着20人)に担当学芸員による特別展ガイドツアー(無料)も実施。開館日やガイドツアーの詳細は、JRA競馬博物館公式サイトで。