すい臓がんでステージ4の森永卓郎が遺す「3つのタブー」が書かれた本 立川談四楼が「のめり込む読書」を語る(レビュー)
本書を、遺書のつもりで書いたと著者は言います。2023年12月、すい臓がんステージ4の告知を受けたことが大きな要因です。 著者が経済アナリストとしてメディアで仕事をすること四半世紀、決して触れてはいけないタブーが存在したといいます。(1)ジャニーズの性被害、(2)財務省のカルト的財政緊縮主義、(3)日本航空123便の墜落事件の3つで、これを言うとディレクターやプロデューサーが真っ青になって飛んでくるのはもちろん、いわゆる出禁になるとか。 しかし(1)はBBCの報道をきっかけに明るみに出ました。我が国メディアの「知っていたけど面倒なことになるから」という態度が酷かったですね。それと海外メディアの方が先ということもです。 (2)は著者が前著『ザイム真理教』で明らかにしましたが、出版に至る裏話が泣かせます。著者は書き手としてもベテランで、各出版社とつきあいがあります。ところがどの出版社も原稿を突き返してきたそうです。理由はお分かりでしょうと。著者は再びタブーを確認したわけですが、たった1社、1人社長の出版社が出しましょうとなったのです。もちろん本書もそこから出ています。 (3)のタブーは事故直後に情報が流れましたが、いつの間にか陰謀論の扱いを受けて消えてしまったものです。しかし本書では驚愕かつ衝撃の事実が語られます。123便の発見はなぜ遅れたのか。迷走するに至るそもそもの原因は何なのか――。皆さまの読む興が削がれてもいけないのでこれくらいにしますが、私は久しぶりにのめり込む読書をしました。 がんの告知を受けた際、医師は「来年の桜を見るのは無理でしょう」と言ったそうです。先日著者をテレビでお見かけしました。だいぶやつれてはいましたが、元気に「今年は初めて家族で花見をする」と言っておられました。おそらく実現したことでしょう。 [レビュアー]立川談四楼(落語家) 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社
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