【鉄路と生きる】福島県の只見線 観光活性化乗り遅れない 会津坂下駅前に誘客拠点 40年空き家…貸し店舗に
福島県会津坂下町の江川卓也さん(41)、石川丈博さん(42)らは25日、JR只見線会津坂下駅前にレンタルスペース「unlock(アンロック)」をオープンする。駅前にもかかわらず40年近く空き店舗だった食堂を改修した。2022(令和4)年10月の全線再開通以降、不通区間だった会津川口(金山町)―只見駅間の駅や観光資源に光が当たるケースが多かった。開所をきっかけに、相互連携による地域活性化が期待される。 企画が立ち上がったきっかけは同級生でつくる無尽「ZERO―六會」だった。10人の仲間で飲食を楽しむ場だったが、年齢を重ねるにつれ年々深刻になる町の過疎化について語り合う機会が増えた。インバウンド(訪日客)を含め多くの人が只見線を利用して観光に訪れるが、会津坂下駅前には観光客向けの施設がなく、通勤・通学の利用者が目立つことが気にかかった。「どうにかして現状を変えたい」。メンバーが一念発起し、準備委員会を発足させた。
洋風のオープンスペースや和室、調理設備を備えていて、飲食店などチャレンジショップ型の出店やイベント開催などに使うことを想定している。町はそばの産地で味の評価は高いが、知名度は他産地ほどではない。若手そば打ち職人が複数いるものの、店舗を持っていないケースがほとんど。施設を活用し、期間限定でそば屋を開店する計画が動いている。只見線利用客が待ち時間に立ち寄れる休憩所兼観光案内所として活用する構想もある。 2人が共同代表として運営する。江川さんは町内の住宅設備会社に勤務し、石川さんは会津美里町の農業法人に所属している。共に「二足のわらじ」で運営に携わる。「大変だと思うことはもちろんある。でもそれ以上に、新たな出会いや、自分たちに期待してくれる方々の応援がうれしい」と口をそろえる。無尽の仲間や同級生らが協力して内装を整えた。活動を知った地域住民は家具を寄贈した。 只見線の駅で降車すると、次の列車が来るまでに時間帯によっては4時間程度かかる。観光客に長い時間、町内にとどまってもらうための工夫や恒常的に施設を利用してもらうための情報発信が欠かせない。SNSなどでのPRやイベント参加者の口コミを活用し利用者を募る考え。江川さんは「この場所から誰かの夢が実現してほしい。それが自分の夢」と思いを語る。