「保護主義」との戦いと米露関係の行方 2017年外交展望
今年は1月20日に米国で誕生するトランプ新大統領がどんな政権運営をして、どんな政策を展開するのかが、世界の大きな関心事になりそうです。日本は、米国をはじめとする周辺国や関係の深い国々とどう接していけばよいのか。各国事情を踏まえて元外交官の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。 【写真】「予想された範囲内」の日露首脳会談 北方領土問題の進展には何が必要か?
●米国
米国では今月末にドナルド・トランプ氏が第45代の大統領に就任します。どの国にとっても今年最初の、かつ最大の外交課題は米国の新政権とどのような関係を構築するかでしょう。 トランプ氏は大統領選挙中から過激な言動を繰り返し、日本については安保条約の不平等性について不満を唱えました。日本の防衛は日本が自力で行うべきである、そのために日本が核武装しても構わないと示唆したこともありました。しかし、日本が本当に核武装すれば世界は大混乱に陥るでしょうし、日本にその意図はありません。 核武装問題についてはトランプ氏もその後、発言に注意しているようですが、日本の安全保障の在り方についてはトランプ氏と日本との間に依然として大きな隔たりがあると思います。 日本は戦後、新憲法の下で国連の集団安全保障による安全確保を防衛の基本とし、それが現実に機能するようになるまでは米国との安保条約に依拠することにしました。この決定は日本をめぐる歴史的、地勢的、政治的諸条件を踏まえ、米国との協力の下で行われたのであり、不平等性はそのような事情に由来しています。 トランプ氏は国連の現状についても激しく批判的な態度を取っていますが、国連が拒否権の問題などのため十分機能しないのも戦後の世界秩序に限界があったからです。世界の政治は過去と切り離せないこと、理想論だけでは済まないことをトランプ氏は理解すべきです。 第2に、トランプ氏は米国経済の現状を憂慮し、貿易・投資・労働面で保護主義的措置を取ることもいとわない姿勢を示しています。これは根が深く、厄介な問題ですが、貿易立国として日本はあくまで自由で開放的な市場経済を目指していかなければなりません。そのため日本自身も努力しつつ、米国にも保護主義に走らないよう要求していくことが必要であり、場合によっては激しい戦いになる可能性もあります。