「保護主義」との戦いと米露関係の行方 2017年外交展望
●韓国
韓国では、朴槿恵(パク・クネ)大統領の友人・側近の不正行為から始まって朴槿恵政権が危機的状況に陥っていますが、任期終了を待たずに退陣するか、米国の新政権発足後まもなく明確になるでしょう。 韓国は日本にとって最も重要な隣国ですが、歴史的な経緯から反日的傾向が表面化し日本として対応が困難になることがあります。朴大統領は就任直後とは異なり、約1年前から日本との協力を重視する姿勢に転じ、日韓両国は慰安婦問題を最終的に解決するための合意を達成することができました。また、北朝鮮の核・ミサイル問題への対処の点でも両国は協力し、緊密に連携しあっています。 日本は韓国内の政治問題にかかわることはできませんが、韓国の政情変化は日本に影響してきます。今回の危機的状況が大事に至らずに解決されることが望まれます。
●中国
中国では、今年の秋、共産党の全国代表大会が5年ぶりに開かれます。習近平政権は第2期目に入ることが決定されるでしょう。 習近平主席はこれまで政治・軍事両面で改革を進め、人事を刷新し、言論の統制と腐敗の摘発という2本の鞭を駆使して体制の強化を図ってきました。しかし、強権的な方法では国民の願望は必ずしも実現されません。人権抑圧の問題も起こっていると思います。 日本と中国の間には、特に政治・安全保障面で違いがありますが、日中両国が友好関係にあることは両国にとっても世界にとっても重要なことであり、また、それは日本国民の願望です。両国は違いを拡大させず、また、それを克服する努力が必要です。 そのための一つのカギは、政治的なひずみを排し、合理性な経済システムに基づく経済・貿易面での協力強化であり、それを通じて両国間の相互依存関係がさらに深化し、相互の信頼が高まることが期待されます。保護主義との戦いが必要なことは米中間にも当てはまります。
●ロシア
ロシアと日本の関係は良好な状態でありません。昨年末にプーチン大統領の訪日が実現しましたが、平和条約問題は進展しませんでした。今後日本としてはロシアと経済面での協力を進め、信頼関係の強化に努めると同時に、北方領土問題の解決を訴え続けていく必要があります。平和条約はこれまで60年間解決できなかった難問ですが、締結されれば日露関係は大きく進展するでしょう。この点で両国の考えは一致しています。 トランプ氏はロシアのプーチン大統領を称賛しており、米露関係が改善に向かう可能性があります。そうなれば、日露間でも制裁が解除され、両国関係の改善に弾みがつくことが期待されます。米露関係は複雑であり、あまり単純に考えるのは危険ですが、一つの可能性としては注目しておく必要があります。 問題は少なくありませんが、日本が各国と協力し、お互いの違いを克服してともに繁栄できる道筋を見出すことは可能だと思います。
----------------------------------- ■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹