400年の歴史で初公開。家康公を祀る久能山東照宮で“禁足地”を訪れ、ケーキセットとともに富士山を楽しむ旅(後編)
JR東海が「富士山×〇〇」をテーマに展開する「もれなく富士山キャンペーン」では、秋~冬の富士山を楽しめる旅行プランを「EX旅先予約」「EX 旅パック」で9月27日~2025年3月31日に展開している。 【画像】日本平ロープウェイの乗り場 新幹線のチケットと富士山を楽しみながらの宿泊、温泉、グルメ、体験などがセットになったプランで、全38あるプランのなかから自分で好きに組み合わせて旅行の予約が可能。それぞれのプランに特典やノベルティが付属する。 後編となる今回は国宝 久能山東照宮と400年の歴史で初公開する“禁足地”を紹介する。 ■ 国宝 久能山東照宮の社殿は体験プラン限定で見学できる ツアー2日目、最初に向かったのは国宝である久能山東照宮(静岡県静岡市駿河区根古屋390)。アクセス方法は2つあり、静岡鉄道 日本平ロープウェイを利用するルートと、久能山下からの徒歩ルートがある。ロープウェイの料金は大人が往復1250円、小人が630円。 久能山東照宮は徳川家康が遺言として指定した埋葬地で、実際に1616年4月17日没後に埋葬されており、御祭神として祀っている。静岡県内唯一の国宝建築だ。「もれなく富士山キャンペーン」ではこの久能山東照宮を3日間限定で特別公開し、山頂から富士山を遙拝する。特別公開日は12月14日、2025年1月25日、3月2日の13時~16時。料金は大人1名7000円だが、料金の一部は久能山東照宮の文化財保存管理費用に充当される。 今回のプレスツアーでは権禰宜の齋藤曜氏にご案内いただいた。齋藤氏は学芸員資格も所有しており、かなり詳しい解説を聞くことができた。まず、禁足地へ行く前に社殿にて精神修養(心のお清め)を行なう。精神修養ではお祓いを受け、徳川家康の御遺訓を読み上げる。 その後、社殿についての解説をお聞きした。社殿は1617年に創建され、日光東照宮より19年前に作られている。創建当時の社殿が修理を繰り返しながら現存しており、文化財的にも非常に貴重な建物だ。本殿と拝殿の床を低い「石の間」でつないだ複合社殿の権現造りで、軸部や軒回りは黒漆、縁などは赤漆を塗った総漆塗り。 石の間には平安時代の宮中でも使われていた紅蘭縁の畳を使用しており、400年前の畳が現存している。ちなみにこの畳、現在では作れる職人がおらず再現は不可能だ。拝殿の欄間部分には部屋を一周するように天女の絵が描かれているが、1枚1枚修復された時代が違うため、江戸時代から260年間にわたる修復の歴史を見ることができる。本来、一般の参拝では拝殿に入ることはできず、この体験プランだけで入ることができる。 社殿の次に訪れたのは徳川家康が埋葬されている神廟。石造りの宝塔で、塔の高さは5.5m、外周り約8mの大きさだが複数の石を組み合わせているのではなく、1つの大きな岩から掘り出して作られているのが特徴。 また、久能山東照宮の参道は社殿や唐門に対して正中を通っていないのが特徴だ。久能山東照宮の正中は富士山頂にある富士山本宮浅間大社の奥宮と直線上に重なるようになっている。これにより参道が正中とずれているのだ。GPSのない時代にどうやって方角を合わせたのか、その方法は明らかになっていない。 ■ “禁足地”を史上初取材。戦国時代の土塁が現存し、織田信長や徳川家康が歩いた道もすぐ目の前に 神廟を後にし、いよいよ禁足地である「鎮守の杜」へ向かう。神職でもお清めや食べるものも制限しないと入れないという場所で、一般公開は400年以上の歴史のなかで初だ。境内の一角にある木戸から足を踏み入れると、すぐに木々が生い茂る場所に入る。神職の方が使うバックヤードのような場所だが、とある資料によると織田信長と徳川家康が歩いたとされている道がすぐそこにあった。実は、明治の神仏分離令以降「戦国時代を終わらせ平和を築いた三柱」として本殿では徳川家康を中心にして左側に織田信長、右側に豊臣秀吉も祀っている。 鎮守の杜の山は久能山ができてからほぼ手を入れておらず、山城として機能していたときの土塁などがそのまま現存しており、神聖な場所であるだけではなく、歴史的にも価値のある場所だ。体験プランでは神職からはこの土塁の解説や山城としての歴史などを聞きながら山の頂上を目指していく。道は最低限の舗装のみなので、スニーカーなど動きやすい服装での参加がお勧め。山道を登ると頂上の「末社愛宕神社」に到着。この社の真後ろに富士山が位置しており、山頂についたらここで遙拝する。ちなみに山頂の標高は216mだ。 久能山は推古天皇の時代に渡来系の技術者であった久能忠仁が山を切り開いて補陀落信仰の寺を建てたことが由来で名前が付いた山で、鎮守の杜の中には祠も残っている。その後、武田信玄により1568年に城砦が築かれ、1582年に武田氏が滅びて駿河国一帯が徳川氏のものになった。 プレスツアーではダイジェスト版で解説をお聞きしたが、実際には境内にある個々の建物や、久能山の歴史や残っている城跡についても詳しい解説を聞くことができる。体験プランの最後にはこのツアー限定で透かしデザインの特別な御朱印紙がもらえるので、神社を背景に写真を撮るのもよい。 東照宮というと日光東照宮も有名だが、こちらは江戸幕府の公式行事を行なう東照宮、一方久能山東照宮は家康公を埋葬した地で、いわば徳川家のためだけの東照宮だ。つまり、財源として江戸時代は幕府がポケットマネーで運営していた。戦前までは別格官幣社として国費で運営や修繕費をまかなっていたが、戦後は宗教法人として運営をしており、修繕・管理費は初穂料からまかなっている。 しかし、2011年(平成23年)に行なった建物全体の漆を塗り替える大規模な修繕では費用が22億円かかっており、令和中に修繕するとしたら50億円以上がかかる見込み。これだけ修繕費がかかる理由は、材料費や人件費などの高騰も1つの理由だ。国内の漆の生産量の減少や、金箔や金泥に不可欠な金の価格上昇などがある。しかし、久能山東照宮では何とか存続しようと奥静岡で修繕用の漆を栽培しているという。 齋藤氏は、このプランを通して1人でも多くの人に久能山東照宮の歴史的・文化財的な重要度を体験して知ってもらいたいと語った。 ■ 山を登って運動した後は「日本平ホテル」のケーキセットで富士山を見ながら一息 久能山を後にして向かったのは、「日本平ホテル」(静岡県静岡市清水区馬走1500-2)。富士山、駿河湾、静岡市街を眺められる眺望が特徴のホテルだ。2022年に開業した別棟のカフェレストラン「ガーデンラウンジ」のケーキセットプランを楽しめる。通常は事前受付不可だが、「もれなく富士山キャンペーン」限定でEXサービス会員向けに事前予約を受け付けている。料金は1名1200円で、ケーキとコーヒーまたは紅茶のドリンクを楽しめる。 また、富士山と清水港が見える客室確約で、夕朝食付きの宿泊プランも提供する。料金は2名1室1泊で1名あたり2万8900円~3万3100円。
トラベル Watch,編集部:二村 茜