「日本は次世代自動車SDV競争に出遅れている」そんな"日本車ダメ"論調が常に間違えてしまう根本原因
■SDVによる社内エンターテインメントの向上は眉唾もの さらに、SDVによる車内エンターテインメントの充実という話もあるが、車の中でしか使えない装備やアプリにお金を払う人がどれほどいるだろうか。 高性能なタブレットなどを持ち込めば良いだけの話ではないのか。タブレットなら車以外の場所でも楽しめるのだ。 自動運転が進めば、運転に集中しなくて良くなるから基本的に家の中と同じ、すなわちタブレットで済むことがさらに多くなるはずだ。 車にはタブレットを置く台と高音質のアンプとスピーカーさえあれば良いのではないだろうか。エンタメ領域でも自動車会社として新たな収益源になるとは考えにくいのだ。 ■ベーシックカーにまでDCM標準搭載はトヨタくらい さらに、センサーなどの技術も日進月歩である。 最新のソフトウエアのパフォーマンスを発揮するためには、最新のハードウエアが必要、となるのが自然なように思える。たとえばパソコンやスマートフォンでも、最新のOSやアプリを動かすには新しいハードウエアが必要なように。 車は今後も進化し続けるだろう。車用のソフトウェアが進化していくのは当たり前の話だ。そしてハードウエアの進化も間違いなく起こる。ソフトとハードは表裏一体だ。 ソフトはこれからの車にとって確かに重要だが、それだけで満たされるものではない。SDVなどといって、何か画期的な変化が起こるように感じさせるのはミスリーディングだろう。 そしてこの分野でも決して日本メーカーは出遅れていないと思う。現在、日本、アメリカ、中国すべてで安価なベーシックカーにまでDCMを標準搭載しているメーカーはトヨタくらいではないだろうか。 ---------- 山崎 明(やまざき・あきら) マーケティング/ブランディングコンサルタント 1960年、東京・新橋生まれ。1984年慶應義塾大学経済学部卒業、同年電通入社。戦略プランナーとして30年以上にわたってトヨタ、レクサス、ソニー、BMW、MINIのマーケティング戦略やコミュニケーション戦略などに深く関わる。1988~89年、スイスのIMI(現IMD)のMBAコースに留学。フロンテッジ(ソニーと電通の合弁会社)出向を経て2017年独立。プライベートでは生粋の自動車マニアであり、保有した車は30台以上で、ドイツ車とフランス車が大半を占める。40代から子供の頃から憧れだったポルシェオーナーになり、911カレラ3.2からボクスターGTSまで保有した。しかしながら最近は、マツダのパワーに頼らずに運転の楽しさを追求する車作りに共感し、マツダオーナーに転じる。現在は最新のマツダ・ロードスターと旧型BMW 118dを愛用中。著書には『マツダがBMWを超える日』(講談社+α新書)がある。日本自動車ジャーナリスト協会会員。 ----------
マーケティング/ブランディングコンサルタント 山崎 明