「日本は次世代自動車SDV競争に出遅れている」そんな"日本車ダメ"論調が常に間違えてしまう根本原因
■無線でソフトウエアのアップデートは「普通」 では、テスラのもう1つのアドバンテージといわれているOTAはどうか。OTAとは前述したとおり無線でソフトウエアのアップデートができる機能である。 無線という意味では、現在ほとんどのトヨタ車にはauの電波を使うDCM(車載通信モジュール)ユニットが標準装備されている。ホンダもオプションだがソフトバンクの電波を使ったhonda CONNECTを展開、日産もオプションでドコモの電波を利用したNissanConnectを提供している。 どれもナビ地図の更新等はすでにOTAでやっているのである。 ■テスラOTAでも「Wi-Fi接続が必須」という現実… ではなぜ車載システムの更新等、大がかりなものはOTAで行わないのか。それは現在の4Gや5Gの通信速度が十分でなく、安定性にも欠けるからだ。 スマートフォンでもOSの更新など大がかりなシステムアップデートをする場合、「Wi-Fi環境で行ってください」と指示されるケースがほとんどだろう。これもデータ通信の速度・安定性が不十分だからだ。 テスラもソフトウエアをアップデートする場合、OTAといってもWi-Fi接続が必須なのである。車を安定したWi-Fi環境に止めてアップデートしなければならないのだ。 テスラはBEVなので、購入する人は自宅に駐車スペースがあって自宅で充電できる人がほとんどだろうからWi-Fi接続も問題はないだろうが、集合住宅や自宅外駐車場の人はOTAでのアップデートが困難なのである。 加えて、車のソフトウエアはデータとして重いだけでなく安全性にも直結するものなのできちんとインストールされたかのチェックも重要だ。 テスラ以外のメーカーは技術的には可能なのだが安全性を重視してやっていないだけなのである。
■ハッキングのリスクと裏表 通信で車の走行にかかわるソフトウエアのアップデートができる、つまり通信で車の走行機能にかかわるソフトを改変できるということは、悪意のある者によるハッキングの可能性もあるということを考慮する必要がある。 ハッキングされれば、ある時一斉に特定モデルのブレーキが利かなくなる、という可能性だってゼロではないのだ。 もちろん、今後データ通信が進化しハッキング対策も徹底できればOTAはどのメーカーでも当たり前のものになり、車車間通信、路車間通信も安全に行われるようになって自動運転にも一歩近づくだろう。しかしそれは車単体だけで解決できる問題ではないのだ(これはBEVも同様だ)。 ■最新装備を詰め込んでも喜ぶのは富裕層だけ またSDVによる機能アップデートの可能性について、センサー等の必要なハードウエアはあらかじめすべて装備しておいて、ソフトウエアによって機能を追加・進化していけるという話もある。そしてそれが自動車メーカーの新たな収益源になるというのだ。 しかしこの話は現実的だろうか。使うかどうかわからない、もしくは使うとしてもまだ十分使いこなせないハードをあらかじめ組み込むとなると当然価格はその分高くなる。そんなものにお金を払う人はどれだけいるだろうか。 テスラユーザーのように、先進技術に関心のある富裕層は面白がって払うかもしれないが、一般の車ユーザーは使うか使わないかわからない装備に余計な金を払う気にはならないだろう。 それに何かアップデートできるとして、その対価としてお金を払いたいと思うユーザーがどれだけいるだろうか。もちろん、画期的な改善であれば払うかもしれないが、そんな画期的な改善は滅多に起きるものではないだろう。 無料なら歓迎だが、多少のアップデートや機能追加にお金を払う人がたくさんいるとはどうしても思えない。これはスマートフォンのアプリでも同じだろう。