「推しに褒められ、寿命が鶴ほど延びた」 清少納言は〝オタクの元祖〟 枕草子につづられたこと
大河ドラマ「光る君へ」。中宮定子さまに仕える清少納言が「枕草子」を書いて励まし、定子さまが読み上げるシーンも話題になっています。最新回では「うつくしきもの」の段が読み上げられ、清少納言を推す編集者・たらればさんが感じたことは……。そんなたらればさんに、枕草子で特に気に入っている章段を聞きました。(withnews編集部・水野梓) 【画像】「光る君へ」たらればさんの長文ポスト 放送の1年「情緒がもつのか…」
定子さまから「姿が見えるようね」
水野梓・withnews編集長:大河ドラマ第23回「雪の舞うころ」では、出産を間近に控えて白装束の定子さま(高畑充希さん)が、同じく白装束の清少納言(ファーストサマーウイカさん)の枕草子を読み上げ、「姿が見えるようね。さすがである」と声をかけましたね……!たらればさん……!!! たらればさん:突はい…この回は……本当に、、、突然の供給で、、、心が、、、いっぱいに、、。。 (一呼吸おいて)定子さまがドラマ内で読み上げていたのは、「うつくしきもの」の段ですね。 <鶏の雛(ヒヨコ)が、足が長くて白く可愛げに、まるで着物を短く着たような恰好で「ぴよぴよ」とやかましく鳴きながら、人の後ろや前を歩いてゆくのは趣深い。また、親鳥と一緒になって連なって歩いてゆくのも、なんともかわいらしい。> たらればさん:定子さまが「あの頃のことが、そなたの心の中で生き生きと残っているのであれば、わたしもうれしい」とおっしゃって、ききょう(清少納言)が「しっかりと、残っております。しっかりと」と言いますが、私も「わたくしの心にも残っております!!!!」と申し上げたいです。 定子さまが続けて「あの頃のことが、そなたの心の中で生き生きと残っているのであれば、わたしもうれしい」とおっしゃって、ききょう(清少納言)が「しっかりと、残っております。しっかりと」と言いますが、私も「わたくしの心にも残っております!!!!」とテレビ画面の前であらぶっておりました。
あんまり嬉しくて、寿命が鶴の齢に…
水野:今後の展開も気になるなか、枕草子を愛するたらればさんに酷な質問をリスナーさんからいただいています……。枕草子の中で、好きな章段は何でしょうか!? たらればさん:これはねえ、悩みますよ。 「新訂 枕草子」(著:河添房江・津島知明)が角川ソフィア文庫から出たばかりなので、ここから紹介する章段は、それにもとづくものです。 それが上下巻に分かれているので、どうしよう、上巻、下巻、どちらかに偏らないよう満遍なく……などと考えていたら本当に時間がかかってしまいまして……。 水野:(笑)。たらればさんの苦悩が伝わってきます。 たらればさん:悩みに悩んで、最初に挙げるのは261段「御前にて人々とも」です。内容をざっと紹介します。 清少納言がほかの女房と雑談しているある日、定子さまが入ってきました。 そこで清少納言が、「世の中が腹立たしく、どこへでも行ってしまいたい、消え去りたいと思うことがあるんです、と説明します。そんな時でも、真っ白で「何を書いてもいい」と言われた紙があると、そういうしんどい気持ちがすっかりなくなってご機嫌になります」、と言います。 定子さまは「そんなことで気持ちが上がっちゃうなんてずいぶん簡単ねえ」と言うんですが、それからしばらくたった後日、清少納言に心悩むことがあり、里下がりした時のことです。 (※この里下がりの理由にはいろんな説がありますが、周囲の女房から「清少納言は道長のスパイではないか」と噂され、「いま自分は定子さまの身近に居ないほうがいいのでは」と考えて里に下がった説があります) すると、清少納言のもとに、以前の雑談を覚えていた定子さまから真っ白い上等な紙が20枚ほどバサッと送られてきました。 その贈り物には、「寿命を延ばすお経は書けないだろうけど、紙を送るから早く私の元に戻ってきてね」という定子さまからの手紙が添えてあって、清少納言は感動して、 <かけまくも かしこき神のしるしには 鶴の齢(よはひ)となりぬべきかな> という和歌を詠んだそうです。 「あんまり嬉しくてわたしの寿命が鶴になりました(=千年延びました)!」。 つまりこれ、「オタクが推しに褒められて寿命が延びる」の元祖なんですよ! 水野:ここに元祖があったか! たらればさん:私は常々「オタクは尊死している場合じゃない、長生きして推しの尊さを広めるべき」といっていますが、その元祖は清少納言先輩だったと。