タデイ・ポガチャルがラスト100kmでプロトンから飛び出しトリプルクラウン達成【Cycle*2024 UCI世界選手権大会 男子エリートロードレース:レビュー】
一方のポガチャルは、残り51.6km、ついにひとりになった。上手く共闘してきたシヴァコフが、6周回目のベルフシュトラーセ登坂中に力尽き、ひたすら孤独に戦い続けるしかなかった。幸いにも残り42kmで、チームカーの同伴が許された。幸いにも沿道から無数の声援が降り注ぎ、いたるところでスロベニア国旗がはためいた。 「頭と脚を使って走り続けた。残り距離を数えては、限界を超えてしまわぬよう心掛けた」(ポガチャル)
後方とのタイム差は、最終周回突入の時点では1分に広がったが、残り17kmでは35秒にまで縮まった。ポガチャルはもはや疲労困憊だったが、追いかけるライバルたちもまた、擦り切れていた。
「距離が250kmを超えた先では、誰もが疲れ切っていて、だから35秒は決して小さくない差だった。最後の坂を上り終えていたから、自分でもタイム差を守り切れると分かっていた。でも最後の10分は、まるで地獄だったけどね」(ポガチャル)
あらゆる感情の波を乗り越え、苦痛に耐え抜き、ポガチャルはついに最後まで先頭で走り切った。ガッツポーズをぐるぐると振り回し、たったひとりで、2024年世界チャンピオンとしてフィニッシュラインを横切った。スロベニアの男子エリート選手としては、史上初めての世界選手権制覇だった。
「子どもだった頃、このジャージを夢見たことさえなかった。単純にツール・ド・フランスや世界選手権へ出場したいと願っていただけ。だから夢が叶ったどころじゃない。それ以上の、とてつもない成果なんだ」(ポガチャル) ここまでパーフェクトだったポガチャルのシーズンが、もっとパーフェクトになった。ピンクを20日間、黄色を19日間も独占した挙句、今後1年間にわたり虹色ジャージをひけらかす権利を手に入れた。1974年エディ・メルクス、1987年ステファン・ロッシュに続く、史上3人目のトリプルクラウン達成。ちなみにレース後には「史上最強の自転車選手」メルクスから、「もはやポガチャルは俺を超えた」発言も出された!
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