フランス・ナントで、異色の芸術祭『ヴァワイヤージュ・ア・ナント(ナントへの旅)/夏の旅』へ。
フランス北西部の都市ナントで開かれている「ヴォワイヤージュ・ア・ナント(ナントへの旅)/夏の旅」。街中に木のアートが溢れています。歴史ある街並みと木のアートが出合います。 【フォトギャラリーを見る】 近年、日本で盛んになっている芸術祭だが、ヨーロッパでも各地で類似のイベントが開催されている。その一つが、フランス北西部の都市、ナントで9月8日まで開催されている『ヴォワイヤージュ・ア・ナント(ナントへの旅)/夏の旅』だ。毎年夏に開催されるこのイベントは、ナント市が主催する『ヴォワイヤージュ・ア・ナント(ナントへの旅)』の一プログラムになる。13回目を迎える今年のテーマは「木」だ。映画のエキストラのようにいつもそこにいるけれど、普段はみんな気に留めることもない"役者"にスポットをあてる。
日本の芸術祭と同様に『ヴォワイヤージュ・ア・ナント/夏の旅』でも、いくつかの作品は会期終了後も恒久設置される。そのうちの一つ、ファブリス・イベールの《木の男》はナントの木で作った大きな人物像だ。その体のあちこちから水が吹き出ている。将来的には体にコケやシダが生え、周囲に溶け込むという。
街の中心部、グララン劇場前のグララン広場に突然、生えてきたように見える大きな木はブラジル出身のアーティスト、エンリケ・オリヴェイラの《フィッツカラルドの夢》という作品だ。オリヴェイラは〈金沢21世紀美術館〉で開催中の『Lines(ラインズ)―意識を流れに合わせる』(~10月14日)にも出品している。ナントの作品のタイトルは、ヴェルナー・ヘルツォークの名作映画『フィッツカラルド』からインスピレーションを得たもの。材料には木のチップが使われている。うねる木は何かの動物のようにも見える。植物と建築、人工と自然との間にこれまでにない対話が生まれる。
木が服を着ているようなオブジェはジャン=フランソワ・フールトゥによるもの。彼の作品は市内2カ所に設置されている。一つは縞模様の服を着た子ども、もう一つはカップルともう“一人”の木だという。子どもの作品は懐かしい子ども時代のノスタルジアを、カップルの作品はベル・エポックの時代の暮らしを表現している。擬人化された木々にさまざまな物語が込められている。