マツダが開発、運転が楽になる“4輪の1輪車”
マツダが個性的な技術を開発した。名前は「G-Vectoring Control(ジー・ベクタリング・コントロール)」。クルマのハンドリングを電子制御技術によって向上させる技術で、あらゆる速度域でのコーナリング、直進、そして乗り心地の改善にまで効果があるという。 【写真】車は真っ直ぐ走らない? ハンドリングの良い悪いとは
誰でも運転が“上手く”なる技術
「G-Vectoring Control」はエンジン、トランスミッション、サスペンション機構、ステアリング機構、シャシーなど、これまで個別に設計されて来たクルマの要素を相互に補完してクルマの運動性能を全体最適化する新しいビジョン「SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICS(スカイアクティブ・ビークル・ダイナミクス)」の一部だ。 しかし、この技術がまた説明しにくい。何しろ作り上げたマツダのひとたち自身が「何か上手い説明方法はないですかねぇ?」という始末。ざっくり言うと、誰にでも運転を易しくする技術ということになるだろう。運転が楽になってコントロールしやすくなる。 しかもマツダによれば、事実上お金が掛からないし、デメリットも無い。初心者は何も知らなくても自然に運転が楽になって、上級者はその効果にニヤリとできる。極低速でも砂利道でもウェットでも限界走行でも利得がある。そんな美味い話があるのかと言いたくなるだろうが、どうもそうらしいのだ。この技術を理解するためにはタイヤ荷重と運動特性に関する基礎知識がそこそこ必要だ。ちょっとややこしいので、まずはその基礎の話から始めていきたい。 のだが、その前に誤解しやすいポイントを先にまとめておこう。電子制御で「クルマを曲げる」というと、詳しい人はブレーキによるヨーコントールと、駆動力によるヨーコントロールを想起すると思う。コーナリングとはクルマ自体が自転する運動と、クルマがコーナー半径の中心点の回りを公転する運動が組み合わさったものだ。ヨーとは自転のことを指す。この自転運動を電子制御で作り出す仕組みにブレーキを使う方法と四駆のトルク配分を使う方法があるということだ。 前者の代表はホンダS660。フロント内輪だけにブレーキをかけることでクルマの自転運動を起こして曲がる方式だ。後者の代表は三菱ランサー・エボリューション。リア外輪へのトルク配分を大きくしてクルマに自転運動を起こす考え方だ。マツダのG-Vectoring Controlはこうした4輪の個別制御による自転運動の励起ではなく、ベテランドライバーなら当たり前にやっていた荷重移動を、人間の制御能力を超えた短周期かつ高精度かつ自動で常時行うものだ。