「陸路(スピルオーバー#1)」(BUG)レポート。物理的な鑑賞体験を自身の身体で受け止めよ
東京駅八重洲南口すぐに位置するアートセンターBUG で、企画展「陸路(スピルオーバー#1)」がスタートした。キュレーションは長谷川新(インディペンデントキュレーター)。 スピルオーバーとは、想定された範囲を超えて電波が届く現象を指す。ここから着想を得て展開される本展では、MES、林修平、FAQ?の3組による新作が発表されている。 昨年9月にオープンしたBUGは、そのコンセプト設計を行うにあたり、アートの現場で活動してきた長谷川と2年以上にわたって議論を重ねてきたという。本展は、その議論の結果が反映されたこの会場で実施されるものでもあるのだ。 キュレーションを行った長谷川は、本展について次のように語った。「2023年1月頃からBUGとともに企画の構想を始めた。BUGは若手作家のサポートを目的のひとつとしているが、関わる人たち全員にとって挑戦になるようなものを目指したいと思った。展示されている作品は、BUGならでは、展覧会ならではの特異な体験となっているため、ぜひ会場に観に来てほしい」。 実際、この展覧会は会場での鑑賞体験を重視していることもあり、それについてここで事細か記述するのは一旦避けようと思う。ぜひ自身の身体を用いた鑑賞体験を大切にしてほしい。 新井健と谷川果菜絵によるアーティストユニット・MESは、宮城県を旅している際に出会った養豚場をテーマに、MESとしての新たなインスタレーションのかたちを展開している(谷川曰く、ラジオドラマインスタレーション)。 愛知を活動拠点とする林修平は、爬虫類や両生類の飼育経験を踏まえて、我々の周縁にある守るべきとされた規範について作品を通じて疑問を投げかけてきた。会場では、デスボイスによるパフォーマンス映像を上映している。 また、入口横にはFAQ?によるZINEコーナーが設置。本展では「交換日記」を起点に性や生、抵抗について発信・意見交換を行ってきたものがZINEというかたちで公開されている。ZINEは会場で販売もされており、鑑賞者自身が交換日記を書き、投函することも可能だ。 ほかにも、会期中には関連イベントとして長谷川によるガイドツアーやトークイベント、MES《サルベージ・クラブ》にまつわるポソレ会(豚肉を用いたメキシコのスープ)も実施予定となっている。実施日時についてはBUGのSNSを参照してほしい。
文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)