主婦の1割「元ヤングケアラー」、5割「夢や目標あきらめた」 今の子に「小学生から家事が当たり前の人生」送らせないために
困難に立ち向ってきた、気概や凄みが表れている
――たしかに、「ケアした経験などを仕事で活かすことができる」「キャリア形成に及ぼす影響はない」といったポジティブな面では、経験者のほうが高い割合ですね。 川上敬太郎さん 経験者の中でも置かれている環境に違いがあり、また、受け止め方が人によって異なってくるとしても、ヤングケアラーとしての経験自体を厳しいものだと見なしている点は共通しています。 それでも経験がある人のほうが、経験がない人がイメージするより前向きな回答の比率が高くなっていることに、困難に立ち向ってきた気概や凄みが表れているように感じます。 ――フリーコメントの中で、私は、「父がちゃんと働いているので進学では困らなかった。......家事スキルは今役立っているし、小学高学年から家事が当たり前の人生だったので負担に感じない。......けれど、感じ方は人それぞれ。いまつらい思いをしている人は声をあげてほしい」というコメントにグッときました。川上さんはどのコメントが響きましたか。 川上敬太郎さん 何度も目頭が熱くなるほど、どちらのコメントも心に響きました。なかでも「自分さえ我慢すれば、という思考になりました」「精神的にも体力的にも追い込まれるので、自分の事を優先することができない」といった言葉には、心をえぐられる強い衝撃を受けました。 子どものうちから自分の気持ちを押し殺すことを余儀なくされてきた苦しさは、大人になってからもあらゆる場面で影響を及ぼしている可能性があるのではないでしょうか。ご本人はもちろん、お子さんに過度な負担がかかってしまった状況に対して親御さんも、当時とても辛い思いをされたことと思います。 ――子ども・若者育成支援推進法が改正されましたが、ズバリ、川上さんはヤングケアラー対策をどうしたらよいと思いますか。 川上敬太郎さん 該当しているお子さんは、大人のような人生経験があるわけでもなく、目の前の生活に精一杯な中で自らヘルプを出すことすら難しい状況に置かれている可能性があります。 プライベートに関わることだけに難しさはあるものの、支援機関や周囲の大人の側からアウトリーチの形で支援を届ける取り組みが必要だと思います。自治体によって対応状況にかなり違いが出ていると聞きます。 その点、法改正されたことは大きな意義があると感じています。国や自治体がヤングケアラーの支援に努めるよう法律に明記されたことで、ヤングケアラーの置かれている全体像がより精緻に把握され、対応が進んでいくことが期待できます。
「元ヤングケアラー」が、夢に再挑戦できる社会に!
――最後に、特に強調しておきたいことがありますか。 川上敬太郎さん かつてヤングケアラーだった大人の現状にも目を向けることが大切です。調査では経験者の過半数が「目標や夢をあきらめざるを得ない」と回答しています。あきらめ続けなくても済むよう、できる限り再挑戦できる社会にしていく必要があるのではないでしょうか。 (J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)