【書評】後醍醐天皇、足利尊氏と戦った北朝初代の光厳天皇:荒山徹著『風と雅の帝』
天皇家中興の祖
光厳は崇光天皇の子、つまり直系の孫である栄仁(よしひと)親王が天皇となることを期待したが、皇位につけなかった。しかし、宮家が創設され、伏見宮初代となる。やがて4代で力尽きた南朝は、北朝に吸収される形で南北朝合一された。そして、栄仁親王の孫、つまり光厳の嫡系が後花園天皇(歴代102代)となり、この流れが令和の皇室につながる。伏見宮家は、今日の皇位継承問題で注目される「旧宮家」の本家である。 後醍醐の天皇中心の政治は「建武の中興」とも言われるが、歴史小説家の著者は「光厳天皇こそ天皇家中興の祖」だという。この国で「唯一無二の家」である天皇家が分裂すれば、世が乱れ多くの血が流れることを本作は教えている。
【Profile】
斉藤 勝久 ジャーナリスト。1951年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。読売新聞社の社会部で司法を担当したほか、86年から89年まで宮内庁担当として「昭和の最後の日」や平成への代替わりを取材。医療部にも在籍。2016年夏からフリーに。ニッポンドットコムで18年5月から「スパイ・ゾルゲ」の連載6回。同年9月から皇室の「2回のお代替わりを見つめて」を長期連載。主に近現代史の取材・執筆を続けている。