【実力以上を発揮する方法】ランナー1263人の記録を押し上げた「たった1つの要因」とは?
「人の実力以上を引き出してくれる、ある要因があります」 そう語るのは、著書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』がベストセラーになるなど、メディアにも多数出演する金間大介さんだ。金沢大学の教授であり、モチベーション研究を専門とし、その知見を活かして企業支援も行う。 その金間さん待望の新作『ライバルはいるか?』は、「競争」をテーマにしたビジネス書だ。今の時代、「競争なんて必要ない」「みんなで仲良くしないといけない」と考える人は多い。会社や学校でも、競争させられる機会は減った。その一方で、「誰かと競うことには本当に負の側面しかないのか?」と疑問を抱いた金間さんは、社会人1200人に調査を行い、世界中の論文や研究を調べた。そこから見えてきた「競争」の意外なメリット・デメリットをまとめたのが同書だ。この記事では、本書より一部を抜粋・編集してお届けする。 ライバルの持つ効果についての研究は、先述の通り世界的に見ても数少ない だが、存在しないわけではない。 そこで、あらためて著名な論文を参照し、ライバルがもたらす恩恵を紐解いてみよう。 ● 競争に関する「ある調査」 まずは、本書でも何度か登場する著名な研究者であるKilduff氏の論文「Driven to Win: Rivalry, Motivation, and Performance」から。 この論文は、個人間の競争関係と、それがタスクへのモチベーションとパフォーマンスに与える影響を調査したものだ。 具体的には、2007年から2009年までの112回に及ぶ陸上の長距離レースに関する膨大な記録を整理し、出場者1263人における競争相手の有無と彼らの成績を検証した。 ● 25秒もタイムが縮まったランナー その結果、自身のライバルが出場するレースでは、調査対象のランナーは普段より速いタイムを記録していることを発見した。 たとえば5kmのレースでは、ライバルがいない場合と比較して、平均しておよそ25秒もタイムが短縮していたことが明らかになった。 無論、論文ではこの結果に対し様々な角度から検証が行われていて、こうしたタイムの短縮効果は、ランナーの性別やもともとの能力には依存していないことも証明している。 ● 調査が指摘した「ライバルの副作用」 ただし、この調査結果には、ライバルの存在におけるいくつかの危惧すべき点も指摘されている。 とくに納得感が高いのがこれ。 「同一のレースにライバルがいることによって、ペース配分が乱れる可能性がある」 これはありそうだ。 ライバルとの戦いに意識が集中し過ぎて、本来のペースを逸脱してしまうことは、容易に想像できる。場合によっては、ライバル関係にあるふたりが集団から抜け出して暴走、なんてことも考えられなくはない。 ライバルがいることで普段以上の力が出せるのはいいことだが、他方で、普段通り、練習通りという姿勢を保つことも必要なようだ。 (本稿は、書籍『ライバルはいるか?』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
金間大介