「“オータニ基金”設立は喫緊の課題」「節税にもなる」 大谷翔平が“MVP級の名誉賞”を受賞する可能性も
ドジャースの大谷翔平(30)は8月21日現在、本塁打部門でリーグ首位。今年も多くのタイトルを獲得しそうだが、ある“賞”も射程に収めつつある。 【写真を見る】まるでセレブ! ドジャース選手の「奥さん会」 ***
「メジャーリーガーが慈善活動を行うのは当然、いや義務と言っていい」 と断言するのは、野球史研究家で名城大学准教授の鈴村裕輔氏である。 「アメリカでは『豊かな人には社会をより良くする義務がある』というのは常識。“豊かな人”とは大富豪やハリウッドスター、そしてスポーツ選手です」 たとえばド軍のエース、カーショーは、三振を奪う度に100ドルをアフリカで病気と闘う子供たちのために寄付している。 大谷も慈善活動に余念がない。東日本大震災や能登地震の被災者支援、コロナ禍での医療従事者へのマスク寄付、心臓移植が必要な“翔平ちゃん”の支援や重病の子供たちを支援する団体への寄付のほか、ド軍入団時には球団運営の慈善団体に10億円を寄付。日本の全小学校へのグローブ寄贈や、ECCと共同での海外留学支援など枚挙にいとまがない。そして鈴村氏いわく、 「確たる理念があるなら、既存の団体に寄付するよりも、自ら組織を作る方が効果的です」
節税にも
実際、慈善活動のための基金や財団を設立するメジャーリーガーは少なくない。 「ヤンキースのジャッジ選手は、自身のニックネームを冠した『オールライズ基金』を新人王獲得翌年に設立。ニューヨーク州ブロンクス地区に暮らす数千人の子供たちを支援しています」 と、メジャーリーグアナリストの福島良一氏が語る。 「基金設立は節税にもなります。ジャッジ選手は2022年オフにヤ軍と9年総額3億6000万ドル(当時のレートで約475億円)の大型契約を交わしましたが、基金が税額控除に寄与したことは想像に難くありません」(同)
基金設立は喫緊の課題
もっとも、年俸が低いと基金の運営費等がかさむため節税のうまみはなく、鈴村氏によると年俸約50億円が採算ラインだという。 大谷は年俸7000万ドル(約100億円)だが、その97%を10年後に受け取る契約ゆえ、節税の必要はなさそうに思われる。しかし、メジャー研究家の友成那智氏によると、 「CM契約など球場外収入は70~80億円に及ぶとされ、“オータニ基金”の設立は喫緊の課題といえそうです」 基金を設立したら、大谷はどのような社会貢献を行うつもりなのか。 「日本でのグローブ寄贈は米国での節税にはなりませんが、彼の野球への情熱を感じます。米国も野球離れは深刻ですから、あちらでも野球人口を増やす活動を行うのでは? また、留学支援から察するに、野球に限らず、さまざまな分野で日米の懸け橋となる人材を増やそうと考えているように思います」(鈴村氏)
MVPに劣らぬ名誉ある賞
メジャーには、「ロベルト・クレメンテ賞」という賞がある。12年連続でゴールドグラブ賞に選出され、“史上最高の右翼手”といわれるクレメンテは、ニカラグア大地震の際、チャーター機で救援物資を運ぶ途中に墜落死した。そんな彼の名を冠した同賞は、慈善活動を行った選手に贈られるが、 「あまたの賞があるメジャーでも、MVPに劣らぬ名誉ある賞です。大谷選手が高額の寄付を長い間続けたら、受賞する可能性は大いにあります」(同) 賞のために行動する男ではないが、ファンにとっては楽しみが増えるかも。 「週刊新潮」2024年8月15・22日号 掲載
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