小中の不登校は過去最多34万人…学校に行かなくなった子供を「ひきこもりの中高年」にする親、させない親
■根気強く声かけをしよう まずは、規則正しい生活と清潔な生活環境を整えることを目指します。強行に親が部屋に入って部屋を片付けるのではなく、自分でやるように根気強く声をかけます。 「部屋を片付けてゴミを出してね。部屋がゴミ屋敷のようになったら不衛生であなたの健康にも影響が出てしまうよ」 「夜は消灯して寝るようにしようね。夜ふかしを続けるとあなたの体調が悪くなるのではないかと心配だよ。それに、朝から活動できると気持ちがいいよ」 「食事はお父さんお母さんと一緒に食べよう。あなたと一緒にご飯を食べられると、お父さんもお母さんもうれしいのよ」 「お風呂に入ったり、シャワーを浴びたりして、清潔にしようね。さっぱりして気持ちいいよ」 などと部屋の外からていねいに声をかけます。メモを書いて食卓のテーブルや冷蔵庫、部屋の前など、子どもの目のつくところに置いたり貼ったりするといいでしょう。 あとで立ち直った子どもたちに話を聞くと、「あのころ、家族全員が自分を見捨てていたので、人生をあきらめていた」と言う子が多いのです。 親から声をかけてもらうことは、心に届きます。すぐに変化が現れるわけではありませんが、根気強く声をかけ続けることが大事です。 ■両親不在の時間をつくる 子どもが部屋を自由に片付ける時間を与えることも大事です。 お父さんとお母さんが出かけて1日か半日くらい家をあけることを、子どもにわかるようにメモや声かけをして伝えます。 なぜ親が不在の時間が必要かというと、ひきこもりの場合、親が起きている時間にトイレに行くのをためらうため、ペットボトルに尿をためていることがあるからです。 それを親に知られずに自分で処分するには、親が不在の時間が必要なのです。こうした細かいアドバイスも39年の経験があるからわかることなのです。
■出てくるきっかけは、本人の好きなこと ただ、声かけするだけでは、なかなかできません。ポイントになるのは、本人の好きなことやこだわっていることです。 たとえば、マンガ好きなら、新しい欲しいマンガがあるはずです。ゲーム好きなら新しいゲーム機や新しいソフトなど欲しいものがあるはずです。そういったものを買いに行くことが、部屋を出るきっかけになります。 「部屋のゴミを出して片付けができたら、あなたが欲しかった△△を一緒に買いに行こう」 「部屋が片付いたら、あなたが欲しい△△を買うお金をあげます」 と、約束しましょう。 そのかわり、部屋の片付けなどができなかったら、あげません。要求されても断りましょう。約束はきちんと守ることです。 また、ひきこもりになっていると、男性の場合たいていは髪とひげが伸びっぱなしです。アルバイトや就職をするためには、散髪に行き、新しい服を買うことも必要です。そのための資金も必要でしょう。 「お父さんお母さんは、あなたがアルバイトや就職をして、自立してほしいと思っているよ。いずれお父さんお母さんは先に死んでしまうから、あなたがきちんと生活していけるような基盤を作ってほしいと思っています。就職するには面接もあるだろうから、そのために散髪代や服代もあげます。就職活動費として、これから毎月××円あげます。ただ、部屋を片付けること、就職にむけて昼夜逆転を直して規則正しい生活をするようにしてください。それがちゃんとできない場合は、お金をあげられません」 というように、約束しましょう。 そして、ゴミ出しや部屋の片付けなどがちゃんとできたら、ほめてあげましょう。大人であっても、精神的にはまだ子どもなのです。少し大げさにほめるくらいがいいでしょう。それが本人にとって大きな自信になり、外に出てみようという気持ちになっていきます。 ■1カ月で中年男性に変化が出る こういったアドバイスをきちんと実行したご家庭は、1カ月くらいすると、変化が出てきます。 親の声かけに返事をしたり、掃除を始めたり、一緒にご飯を食べるようになったりします。 あるご両親は、「1カ月で子どもが大きなゴミ袋10袋も出して、部屋を片付けました。『よくがんばったから、ごほうびにお寿司を食べよう』といったら、数年ぶりに子どもと一緒に夕食を食べることができました」と、感激していました。 別のご両親は、「3週間でペットボトルや缶のゴミを大量に出して、少しずつ親子で会話するようになりました。2カ月で夕飯を一緒に食べるようになりました。先日はこの数年で初めて外食に行き、息子の好きな焼肉を食べて、ビールで乾杯できました」と涙ながらに報告してくれました。 もちろん、一方向に順調によくなっていくわけではありません。反発も必ずあります。それでも、揺り戻しがあるのは当然のこと、と冷静に構えることです。部屋の片付けなど約束を守らなければ、お金をあげないなど、約束をきちんと守ることです。片付けをしないのにお金をあげてしまうなど、譲歩してしまっては、部屋から出てくるチャンスなくしてしまうことになります。