天皇陛下が自由を満喫された、英国オックスフォード大学留学中の食事
【夕食】ネクタイを締めてガウンを羽織り、ラテン語の祈りから始まる
夕食は、インフォーマルな食事とフォーマルな食事が別に用意される。 午後6時30分からはインフォーマルな夕食。服装は自由でよく、セルフ・サービスとなっている。メニューは、スープと肉料理、デザートである。スープの皿と肉料理の皿を受け取り、カウンターでよそってもらう。温野菜は、テーブルに置いてある皿からめいめいが取り分ける。浩宮さまはゆで過ぎくらいの芽キャベツが大好物だったという。 フォーマルな夕食は午後7時30分から始まる。学生はガウンとネクタイの着用が義務づけられ、違反したり遅刻するとビールの一気飲みの罰が与えられる。ホールの奥の一段高くなったハイ・テーブルに先生方が座り、木槌の音を合図に全員が起立し、学生の代表が前に進み出てラテン語のお祈りをしてから、食事が始まる。メニューはこちらもスープと肉料理、デザート。映画『ハリー・ポッター』シリーズのワンシーンさながらである。 週2回ほど、ゲスト・テーブルの予約が取れると、外からの知人を招いてロビーで食事をすることができる。ここでは手の込んだ食事が出され、ワインを持ち込んでゆっくりゲストとの会話を楽しむこともできた。浩宮さまも、駐英大使や大使館の人たちを招いて食事をされたという。
アフリカへの基金や難民救済として寄付
浩宮さまの心に残ったのは、食事を利用してのチャリティーだった。 1年に1度、1週間にわたって「ブラウン・ライス・ウィーク」が行われる。通常と同じ食事代を払うが、食事は「ブラウン・ライス(玄米)」のみで、食材費の差額をアフリカの飢饉や難民救済の資金として寄付するのである。学生たちが、苦しんでいる人々に想いを馳せるための催しであった。浩宮さまも、「一つ善行をした」と感じられたものだった。 ちなみに、浩宮さまが滞在中の食事の費用は、朝食は43ペンス、昼食は78ペンス、夕食は1ポンドであった(1983年10月の1ポンドは日本円で348円。1ポンド=100ペンス)。コレッジで食事をするとだいぶ節約になる。さらに、節約のために1日2食ですませる学生もいた。浩宮さまにとって、学生が食費を節約する様子を目の当たりにされたのは、貴重な経験だっただろう。 また、ミドル・コモン・ルーム(MCR)では、学期ごとにディナーが催された。ゲストを招待することもでき、男性はディナー・ジャケットを着用し、女性も美しい装いで参加する。食後のポートワインが出されると、代表の「To the Queen」の発声に続いて、全員で唱和する。浩宮さまは、アット・ホームなこの雰囲気がお好みで、毎学期出席されていた。ふだんとは違う学生と知り合うチャンスでもあったという。