天皇陛下が自由を満喫された、英国オックスフォード大学留学中の食事
【朝食】トーストとコーン・フレークスに濃い紅茶
朝食は午前8時15分から45分まで、食堂でのセルフ・サービスである。メニューはトーストに卵料理、日によってはハムやベーコン、ソーセージなどがつき、コーヒーと紅茶の用意がある。金曜日の朝のみ、キッパー(ニシンの燻製)が出た。浩宮さまは、小骨を抜き取る作業に苦労したという。 浩宮さま自身は、毎朝トースト1枚に、コーン・フレークスなどのシリアル類と紅茶をとり、ゆで卵を加えることもあった。紅茶はきわめて濃く、まるでコーヒーのようだった。 食事を終え、自室に帰ると自分で淹れたコーヒーを飲みながら新聞に目を通す。コーヒーを淹れる愉しみを覚えたのも、留学時代であった。
【昼食】どっさりの温野菜にシチューかスパゲッティ
昼食は午後12時45分から、セルフ・サービス。マートン・コレッジの食事はコレッジのなかで最もおいしかったから、他のコレッジの学生までやってきて食堂の外は長蛇の列である。メニューは、ビーフ・シチューなどのシチュー類にスパゲッティ、パイなどの3~4種から選べる。 まずメインディッシュ用の大皿が渡され、そこにポテトや芽キャベツ、グリーンピースなどの温野菜が盛り付けられる。「少し」と言わないと山のように盛られてしまう。浩宮さまも入学当初は「少し」と言うタイミングがつかめず、メイン料理を覆い隠すほどに温野菜を盛られてしまってうんざりしたこともあった。 昼食後は、ミドル・コモン・ルーム(MCR)に行って仲間とコーヒーを飲みながらひとときを過ごされる。ミドル・コモン・ルーム(MCR)は13世紀末に学長の私邸のホールとしてつくられたもので、当時の面影を残す壮観で美しい部屋である。コーヒーはかなり濃かったが、友人との会話が楽しみだったという。 コーヒーを飲んでくつろぎながら、ときには友人たちが一つの話題で議論を繰り広げることもあった。 ちょうどウィンブルドン・テニスに初めてサービスのインかアウトかを音で判定するシステムが導入された折で、その是非を話し合ったこともあった。学生たちが音の判定システムはいらないと言うのに対し、一人の学生が笑いながら「判定者のメガネのレンズがあまりに分厚いから、速球の判定は困難ではないか」と反論する。学生らしい和やかなひとときである。