アルコール依存症のリアル描く劇、大阪の小劇場で公演…患者や医療従事者に1年以上取材重ねる
「心折れました。もうあの子を殺して……」「どうしてそう思うんですか」
劇作家の高橋恵さん(54)は「短編ではわかりやすい仕掛けを用いて作劇しがちだが、人間関係ややりとりをじっくり描くことにした」。演出の橋本匡市さん(42)は「大事なことを言われて当事者らが変わるのではなく、話を聴いてもらったから変わっていくのが見えるよう」と手応えを語った。
作品では、人間を描くことを重視している。福本さんは「当事者の負の部分、どす黒い内面も描かれるから僕ら患者はハッとするし、観客は作品に入り込む」と話す。長く断酒を続けており、今も週1回程度の通院を欠かさないという。
公演は前売り3500円、当日4000円。問い合わせは、090・9696・4946。
国内で54万人が経験
アルコール依存症は、大量の飲酒を長期間続けることで発症する精神疾患。厚生労働省によると、国内で依存症を経験した人は約54万人と推計される。
依存症問題に取り組むNPO法人「アスク」の今成知美代表は「きっかけは仕事のストレスや災害のトラウマなど様々。酒の量を制御できないのは、意志が弱いからではなく病気の症状だと知って、早く治療を受けることが大事」と話す。世界保健機関(WHO)が作成した評価法「AUDIT(オーディット)」で自らの飲酒習慣を把握できる。