「鴻海による買収」回避のためホンダとの経営統合に動く日産、だが鴻海からみれば「むしろ好都合」?
■ 中国の消費者から見れば日本車は「時代遅れ」 たしかに日産は、2018年にゴーン会長が逮捕されて以降、低迷を続けている。先月7日、同社の内田誠社長は、今年4月から9月の連結決算で、営業利益が前年同期比で90.2%減の329億円に落ち込み、約9000人を人員削減すると発表した。 4月から9月の世界販売台数も、前年同期比で3.8%減の158万5547台。特に世界最大の中国市場では14.3%減と、苦戦を強いられているのだ。中国の大手経済紙記者に聞くと、こう述べた。 「中国市場で日産は、最新の11月の販売台数で見ても、販売台数は6万3545台で、前年同期比15.1%減。もう販売減に歯止めが利かない状況です。ちなみにホンダも同様で、11月の販売台数は前年同期比28.0%減の7万6773台でした。 これまで中国の消費者にとって、日本車を買うことは、一種のステイタスになっていました。しかし現在では、中国全体の潮流である『EV化』に出遅れ、『日本車は時代遅れ』というイメージです。 実際、今年1月~11月の新エネルギー車(電気自動車・プラグインハイブリッド車・燃料電池車)の販売台数は1126万2000台で、自動車全体の4割を超えて40.3%に達しました。この流れを牽引しているのは、BYD(比亜迪)を始めとする中国メーカーです」
このページから読み始めた方へ:この記事をはじめから読む→ ■ 日産・ホンダの統合、実現すれば鴻海にとってむしろチャンス 昨年10月、三菱自動車が243億円の特別損失を計上して、中国市場から撤退。今年6月には、日産が東風日産の江蘇省常州工場を閉鎖。10月には、ホンダが広東省広州の広汽ホンダの第4工場を閉鎖。11月には湖北省武漢の東風ホンダの第2工場を休止……。 このところ、日本の自動車メーカーの中国市場における「苦戦」を伝えるニュースばかりだ。新車の販売台数が年間3000万台を超え、世界最大の自動車市場である(世界2位のアメリカの2倍規模)中国で、淘汰(とうた)されつつある日本メーカーは、「今日の中国市場は明日の世界市場」と危機感を募らせている。加えて、「鴻海の野心」に脅える日産は、背に腹は代えられなくなり、ホンダとの経営統合に向かうというわけだ。 ではこれで鴻海の「日産買収」の野望は潰えたのか。いや、どうやら鴻海は諦めていない模様だ。前出の元鴻海の幹部は語る。 「日産とホンダが経営統合すれば、郭元会長は『さらにチャンス到来』と思うだろう。なぜなら、いくら経営統合してもうまくいかず、さらに大きくなった日本企業を買収できると判断するからだ。このまま円安が続けば、統合した両社を買収するにしても、それほど大きな負担ではない」 自動車産業は、日本経済を支える唯一の残された屋台骨と言われてきた。だがもはや、「最後の砦」も危うくなってきた――。
近藤 大介