社説:イスラエル報復 ただちに停戦に応じよ
イスラエルがイランへ「報復攻撃」を行った。中東の地域大国同士の直接攻撃の応酬は、周辺一帯に戦火を広げかねない。互いに報復は踏みとどまるべきだ。 イスラエルは、戦闘機や無人機100機以上で、イランの軍事施設を攻撃した。今月1日のイランによる弾道ミサイル攻撃への報復としている。 周辺国の親イラン勢力に対する武力行使も続けており、さらに国連平和維持活動(PKO)部隊にまで攻撃を加え、要員を負傷させるなどエスカレートさせている。 国連は「国際人道法違反だ」と厳しく批判し、40カ国が攻撃を非難する共同声明を出した。世界を敵に回す蛮行というほかない。 国連安保理は緊急会合を開き、多くの理事国はこれ以上の軍事行動を控えるよう求めた。国際社会は、両国に圧力を強めなければならない。 イスラエルは昨年10月のイスラム組織ハマスの奇襲以来、パレスチナ自治区ガザに侵攻。「自衛」の範囲をはるかに超え、市民を巻き込んだ戦闘を続けている。ハマスと連帯する民兵組織ヒズボラの拠点レバノンにも地上侵攻し、後ろ盾のイランへ攻撃した。 応酬を懸念する米国政府に配慮し、核施設や石油施設を回避した限定攻撃だったとされる。イラン側も、本音は本格的な衝突を避けたい思惑が透ける。 イスラエルはPKOへの攻撃に先立ち、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の診療所やポリオ(小児まひ)の予防接種を行う学校まで攻撃している。自らも加盟する国連を敵視する攻撃や妨害は、到底認められない。 さらにイスラエル議会は、UNRWAの国内での活動を禁止する法案も可決した。ガザの難民たちへの食料や教育、保健サービスが完全に止まる恐れがある。 死者は女性や子どもたちを含め4万3千人を超え、餓死者も出ている。冬が近づく中、人道危機はいっそう深まりかねない。 ガザでの戦闘を巡り、仲介国エジプトがイスラエルとハマスに対して2日間の休戦案を提示したが、協議の成否は見通せない。 大統領選への影響を気にし、イスラエルの暴走を許しているのは米国だ。ガザの人道支援を妨げれば、軍事支援を停止する可能性があると警告しているが、実行する時ではないか。 報復の連鎖の根源にあるガザの停戦を、一刻も早く実現させるべきだ。