富士ソフト「物言う株主」に翻弄された数奇な運命 ファンドの争奪戦で創業家と会社が対立構図に
■非公開化へ一気に動き出した3D 経営改革を求める3Dの指摘に対し、富士ソフトは一定の理解を示したうえで、企業価値向上委員会を新設して対応を進めてきた。2023年2月には自社の不動産事業を縮小する方針を示し、すでに一部の売却を開始。同年11月には上場子会社4社の完全子会社化も発表し、利益相反の観点から批判が大きかった親子上場の状態を解消した。3Dが株主になったことで、富士ソフトの経営改善が進んだとの見方もできる。
ただ、アクティビストが「エグジット」(出口)を見据え始めたとたん、雲行きが大きく変わる。 2023年3月に創業者の野澤氏が退任すると、3Dはそれを好機と捉えるかのように、富士ソフトの非公開化に向けて本格的に動き始めた。非公開化は、アクティビストにとっては自社の保有株式を高値で一気に売却できるため、利点が大きいとされる。 3Dは同年7月、富士ソフトの同意を得ないまま、非公開化に向けた企業価値向上策をファンドに募り、KKRなどから提案を受領。9月に富士ソフト側に共有した。
富士ソフトは独立社外取締役6人から構成される特別委員会を設置して、非公開化の是非について議論を行うことを決めた。直前の8月末には、買収提案を受けた企業に「真摯な提案には真摯な検討」を求める経済産業省の行動指針が公表されたばかりだった。 ■「株主構成を整備することが最重要」 その後も議論の進捗に3Dから揺さぶりをかけられた富士ソフトは、ついに今年8月、KKRのTOBに賛同する意向を表明するに至る。 会社側は非公開化の道を選んだ理由について、「経営推進上の課題である株主構成を整備することが最重要で、その手段としてPEファンドの提案を受け入れることが最善との結論に至った」と説明。特別委も「(2028年12月期に売上高4350億円、営業利益450億円を目指す)中期経営計画の目標実現には、中長期的視点に立った安定した経営基盤が必要」などとの見解を示した。