女子フィギュアは空白の時代か
ただ、強化策成功の裏で、トリノ五輪前には日本全国でリンクの閉鎖が相次ぐという問題が起きていた。ポスト浅田の世代は、アスリートにとって“ゴールデンエイジ”と呼ばれる小学生のころに練習環境が変わったり、やむを得ない事情で競技から離れた選手が多かった世代でもある。あるコーチは「才能はあっても、物理的な問題でフィギュアを続けられなかった子どもは何人もいた」と指摘する。 そんな中、さらに下の世代である今の中学生年代に将来性豊かな逸材がそろっているとの評判が高い。 今シーズンからジュニアGPに参戦している13歳の中学2年生、樋口新葉(わかば)は、デビュー戦だったジュニアGPチェコ大会で2位となり、2戦目のドイツ大会では見事優勝を飾った。ソチ五輪金メダルのソトニコワを彷彿させるスピードと力強いジャンプが武器。難度の高い「3回転ルッツ+3回転トゥーループ」をはじめ、「「3回転フリップ+3回転トゥーループ」「ダブルアクセル+3回転トゥーループ」といったコンビネーションジャンプをいとも容易く決めてしまう。 まだ幼さは残っているが、「表現力とジャンプの力強さに注目して欲しいです」と、見せ所をしっかりと自覚している。まずは12月12日からのジュニアGPファイナルでロシア勢との戦いが待っているが、それが終われば全日本選手権(12月25~29日、長野)があり、いきなり上位を脅かす存在になりそうな予感もある。 樋口よりさらに一つ下には、中学1年生の本田真凜(まりん)も控える。小気味よいジャンプとはつらつとした表現力が魅力。荒川静香を目標としていると言い、「18年の平昌五輪では金メダルを取りたい。そのときは16歳になっているので出られる年齢だし、チャンスはあると思います」と力強い。 日本女子が14年ぶりにGPファイナル進出を逃したことは残念だが、下の世代に期待度の高い選手はいる。上が抜けた分、ビッグイベントに出るチャンスも広がっていくだろう。 現在、隆盛を極めているロシアも、バンクーバー五輪後の2010-2011年シーズンにはGPファイナル進出者ゼロというときがあった。抜きんでた一人の才能で戦うのではなく、何人もの選手が切磋琢磨して成長していくという図式を継続させることが、未来を明るく照らしていく方法だ。 (文責・矢内由美子/スポーツライター)