「日本に適応できない」? インターナショナルスクール卒業生の〝その後〟 国内で進学、就職した結果
「日本で働く方が『市場価値』が高い」
進路はどうなるのでしょうか。 インター校の多くは、日本の学校ではないため、日本の義務教育としての卒業資格がもらえず、国内で高校を受験する際には「中卒認定試験」を受ける必要があります。 大学については、今は、国が国際的教育プログラムを活用した入試を推進するなど、インター生にもかなり門戸が開かれました。 しかし、佐藤さんの時代にはインター校出身者が受けやすいAO入試(現・総合型選抜)を導入する大学はわずかでした。級友はほとんどが海外の大学に進学したそうです。 佐藤さんは、親と給与や転職事情などをオープンに話すことが多かったため、「自分の市場価値」について考えていました。「英語ができる人は世界にいくらでもいる。日本語と英語が話せるなら、日本で働く方が『市場価値』が高い」、そう考えて、日本での就職を目指し、「日本の社会に触れておこう」と、日本の大学にAO入試で進学しました。
「鬱、鬱、鬱、鬱、鬱、鬱…」練習
大学では、日本の高校から来た学生が英語を勉強する傍らで、佐藤さんは日本語を必死で勉強して、「鬱(うつ)」などとひたすら書き写していたそうです。 でも、言葉よりも苦手だと感じたのは、「上下関係」でした。大学に入って、4年生の先輩に対していきなり「タメ口」を使ってしまい、驚かれました。「敬語が苦手だったんです。いきなり社会人になっていたら、ぶん殴られていたかも」 大学の部活動で社会人とやりとりするなど、〝社会性〟を鍛える環境に身を置きました。そうしたことで徐々に身につけました。
「ウェットな日本の人間関係は苦手」
佐藤さんは大学院を経て、外資系コンサル会社に就職しました。いまは、海外のシステムを導入する日本企業に入り、外国のエンジニアと日本ユーザーの間に立って、橋渡しをしています。 特に評価されているのは、日英両言語が分かることだけではなく、双方の仕事の文化を理解していることだと言います。 海外では「ミーティング内で決断する」ということが当たり前。一方で、日本ではミーティング前に資料を準備して、事前に説明もしておくという「お膳立て」をしつつ、その場で決断を迫らない方がうまくいきます。互いの言い分を翻訳するだけでなく、文化を理解しつつ間で立ち回れる佐藤さんのような存在が、顧客から喜ばれるそうです。 「『ごまをする』といったウェットな日本の人間関係はまだ苦手」と笑いつつ、「上座や下座」「あいさつの仕方」などのビジネスマナーも仕事の中で身につけ、今は新卒の社員を教える立場になっています。