福島・浪江の窯元が帰還後初の企画展 キャンドルスタンドなど販売
東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が昨年3月に一部解除された福島県浪江町大堀地区に帰還して再開した大堀相馬焼の窯元「陶吉郎(とうきちろう)窯」で6日、「大堀帰還展 希望の灯火(ともしび)―大堀相馬焼の未来を照らす」が始まった。6月の店舗オープン後、企画展は初めてで、新作のキャンドルスタンドなどを販売する。11日まで。 大堀地区には東日本大震災前に20以上の窯元があったが、原発事故で帰還困難区域となり、半数以上の窯元が休止、廃業を余儀なくされた。陶吉郎窯は、福島県いわき市に工房を構えて作陶を再開したが、9代目の近藤学さん(70)は「伝統を未来につないでいくためには大堀でやるしかない」との思いから大堀でも施設を再建。6月に店舗や工房をオープンし、長男・賢(たかし)さんらと2拠点で活動する。 帰還展では、震災への鎮魂の願いを込めたキャンドルスタンドを初めて制作。皿や湯飲みなど含め約計400点を展示・販売する。7、8両日は同じく町内で事業を再開した鈴木酒造店の日本酒や、水産仲卸「柴栄水産」の扱う「請戸(うけど)もの」のヒラメを陶吉郎の器で楽しむ試飲・試食会も開く。 現在、大堀地区で再開した窯元は陶吉郎窯だけで、住んでいる人はいない。雑草の茂る農地や家屋解体された更地も目立つが、窯元の再開後は首都圏など遠方からの来客もあったという。近藤さんは「300年続いた伝統を継承するために大堀に戻ってきた。まずは多くの人に現状を知ってもらい、実際に来てもらうのが一番。ここに人を呼び込みたい」と前を向く。帰還展は入場無料で午前10時~午後6時。【尾崎修二】