新米が出ても「コメ不足」解消ならず…消費者を騙した農水省“4つのウソ”が「価格高騰」、「コメ離れ」の引き金に
1999年以来、最も少ない在庫
ところが、農水省は坂本大臣を筆頭に「需給の逼迫(ひっぱく)は見られない」と常に言い続けてきた。これがどれだけウソ八百だったか、我々はよく知っている。農水省のウソの2つ目だ。 新聞のデータベースで専門紙や地方での報道を振り返ってみると、農水省のウソが明らかになって興味深い。例えば8月25日に朝日新聞の兵庫県版に掲載された「米品薄、待ち望む実りの秋 需要増・地震で買いだめ、切迫感が加速」の記事を見てみよう。 朝日新聞がコメ不足の理由を農水省に質問すると、《昨年の高温と渇水で品質が下がり、精米の歩留まり率が下がって流通量が目減りした》、《米の価格上昇が他の食料品と比べて緩やかで、訪日外国人数が増えたこともあり、消費が増えた》との回答だった。 その結果、昨年の6月末にはコメの在庫は197万トンあったのに対し、今年の6月末は156万トン。なんと20・8%も減少し、1999年以降の統計で最も少なくなっていたのだ。 だが、在庫が少なくなっているにもかかわらず、農水省は「主食用米について、政府の備蓄米を放出するほどの需給の逼迫は見られない」と朝日新聞に強弁する。
2月に報じられたコメ不足
「8月は新米の出荷前ということもあり、在庫が最も少なくなるのは事実です。そこに8月8日、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されました。農水省は地震を不安視した国民の一部がコメを買い占めた可能性も指摘し、朝日新聞の記事に掲載されました。ところが、これも農水省のウソです。実はコメ問題の専門家や関係者は、今年の2月からコメが不足していると訴えていたからです」(同・記者) 「需給の逼迫はない」が2つ目のウソなら、「南海トラフ地震の注意発表によって買い占めが起きたこともコメ不足の理由」は3つ目のウソだ。それよりも、ずっと前からコメ不足は指摘されていたからだ。 論より証拠、専門紙の報道をご覧いただこう。日本農業新聞は2月17日、「米『不足感』を指摘 耐暑品種切り替え事例も 農水省で意見交換会」との記事を掲載した。コメの卸など、流通関係者の指摘を記事からご紹介しよう。 《「事前契約量を割り込む産地もあり、調達が予定水準に届いていない」と報告した》 《米の不足感によって、流通業者から問い合わせが増えているが、「応えられる在庫がない状況だ」と説明した》 2月の段階でコメ不足が指摘されていたにもかかわらず、農水省は何の手も打たなかったと言っていい。同紙は4月5日に「米需要 異例の逼迫感」と再びコメ不足を報じ、5月14日にはスポット価格で「あきたこまち」と「まっしぐら」が60キロで2万円を超える異例の高騰を示したことを伝えた(註1・註2)