新米が出ても「コメ不足」解消ならず…消費者を騙した農水省“4つのウソ”が「価格高騰」、「コメ離れ」の引き金に
北朝鮮に届けられた備蓄米
次第に専門紙だけでなく、一般のメディアもコメ不足を報じるようになった。共同通信は6月12日に「コメ価格高騰」の記事を配信し、7月18日に「報道ステーション」(テレビ朝日系列)がコメの品薄と値上がりを番組内で取り上げた。8月8日の地震臨時情報が発令される前から、コメ不足は指摘され、メディアは報道していたのだ。 たまりかねた大阪府の吉村洋文知事が8月26日に備蓄米の放出を要請したが、坂本農水相は27日の閣議後会見で「民間流通が基本となっているコメの需給や価格に影響を与える恐れがある」と消極的な姿勢を示した。 それでも吉村知事は9月2日の会見でも備蓄米の放出を再要請したが、今に至るまで農水省は前向きな反応を見せていない。ところが過去、備蓄米の放出に農水省が意欲を見せたことがあったのをご存知だろうか。 1997年10月、日本農業新聞は1面トップで「北朝鮮に米6万7000トン国産3割、輸入7割」との記事を掲載した。 当時の首相は橋本龍太郎氏。同紙は《政府・与党は8日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対して国連機関の世界食糧計画(WFP)を通じて米6万7000トン(2700万ドル分)の食料支援を行う方針を決めた》(註:漢数字を算用数字に改めた) 《9日の閣議で小渕恵三外相が報告する。援助米の約3割は1994年産の国産の政府備蓄米、約7割は95年度に初輸入したミニマム・アクセス米を充てる予定だ》
精米の歩留まり説もウソ
「北朝鮮では1994年から98年にかけて、朝鮮戦争の休戦以降、最大規模となる飢饉が発生しました。朝鮮労働党機関紙『労働新聞』は96年1月1日の新年共同社説で、深刻な飢饉を『苦難の行軍』と名づけました。飢餓状態が頂点に達したのは97年、甚大な人的被害が出たことを橋本内閣は重視し、自民党内からも『拉致問題が解決していない』と反対意見が出たにもかかわらず、食糧支援を決定しました。そして備蓄米を北朝鮮に送っても日本のコメの市場価格には影響が出ません。余って保管に困っていた輸入米の在庫も減らせるという一石二鳥に、農水省が頑強に反対することはありませんでした」(同・記者) なぜ農水省は消費者に安くコメを届けようとはしないのか。キヤノングローバル戦略研究所は公式サイトに9月5日、「コメ不足に対する緊急政策提言」を掲載した。これに興味深い指摘が書かれている。 先に朝日新聞の記事を紹介し、コメ不足の原因として農水省は《精米の歩留まり率が下がって流通量が目減りした》、《訪日外国人数が増えたこともあり、消費が増えた》との理由を挙げたことをお伝えした。 ところが山下一仁研究主幹は、これを真っ向から否定する。要するに、これも農水省のウソだったのだ。4つ目のウソということになる。