インバウンド需要の鈍化と円安・物価高の個人消費打撃で非製造業の景況感が17四半期ぶりに悪化(日銀短観・6月調査):7月金融政策決定会合の展望
物価環境には大きな変化は見られない
人手不足が深刻さを増し、賃金上昇圧力は強い中でも、物価環境には大きな変化は見られない。足もとでの円安進行は物価高要因であるが、海外での商品市況の安定や国内での価格転嫁の一巡が背景にあるだろう。 大企業の販売価格判断DI、仕入れ価格判断DIは、過去2年近く顕著に下落した後、今回調査では小幅上昇となった。しかし先行き判断DIは再び下落している。ただし、円安進行に歯止めがかからなければ、価格判断DIは第2ラウンドの上昇局面に入る可能性もあるだろう。 企業の物価見通しは、3年後、5年後の水準が前回調査から0.1%ポイント上昇し、それぞれ2.2%、2.3%となった。円安進行が企業の中長期の物価見通しを幾分押し上げている可能性があるだろう。 他方、大企業の資金繰り判断DI、貸出態度判断DIは前回調査から変わらず、3月のマイナス金利政策解除後も、企業を取り巻く金融環境には目立った変化は見られない。
GDP統計改定と物価高騰の逆風による個人消費の異例の弱さ
ところで内閣府は7月1日に、2024年1-3月期GDP統計(二次速報)の改定値を公表した。GDPの基礎統計の一つである建設総合統計が過去3年間に遡って修正されたことを反映したものだ。 建設総合統計は毎年6月に確定した建設投資額の実績値から算出される直近の補正率を用いて、前年度から 3か年分を遡及改定されるが、今回はそれに加えて、建設工事施工統計調査の新推計、建築着工統計調査の新たな外れ値対応を反映した出来高にする改定が行われた結果、改定幅が大きくなった。 その結果、2024年1-3月期の実質GDP(二次速報)は、前期比-0.5%から-0.7%へ、年率換算値は-1.8%から-2.9%へと大幅に下方修正された。民間住宅投資と公的固定資本形成の下方修正幅が目立った。 そして、1-3月期GDP統計(二次速報・改定値)で、実質個人消費は前期比-0.7%と、4四半期連続でのマイナスとなった。実質個人消費が4四半期連続でマイナスとなったのは2009年1-3月期以来のことであり、かなり異例の弱さと言える。 この時期には、リーマンショック(グローバル金融危機)という歴史的な経済危機が起こった。今回は、それに匹敵するような経済危機が起きていない中にもかかわらず、実質個人消費が4四半期連続マイナスとなった理由は、歴史的な物価高騰の影響以外には考えられないだろう。 そして、抑えが効かなくなった円安は、物価高騰がこの先も続くとの個人の懸念を一段と強め、それを通じて個人消費を大きく損ねてしまっているのが現状だろう。この点から、円安に歯止めがかからない限り、個人消費の回復、経済の復調は難しいのではないか。