英国でも日本でも「静かな離職」進行中 従業員のエンゲージメントレベルアップは上司次第
逼迫する英国労働市場の影響で増える「静かな離職者」
ギャラップ社の同レポートでは、現在の雇用状況をどう見ているかや離職の意志についても調査している。雇用状況が「良い」と回答している人は48%、「新しい仕事を探している・積極的に探している」のは31%となっている。 マッキンゼー社他の過去3年間の調査で、「現在の勤め先を辞めたいが、実際には辞めなかった」という従業員は、企業の20~40%を占めることがわかっている。つまり、企業の5人~2.5人に1人は「静かな離職者」なのだ。こうした人たちは、仕事への不満がある確率が非常に高く、ほかの従業員の3倍にも上るという。 ギャラップ社の同レポートによれば、従業員のエンゲージメントレベルの低さには、経済的要因が関係していると指摘する。国家統計局(ONS)によれば、失業率は今年の4月までの3カ月間、それまでより0.1ポイント上がり4.4%だった。これは2021年9月以来、最も高い割合だ。 今年4月から6月にかけて、英国の推定求人数は前四半期比3万件減少し、88万9,000件だった。依然としてコロナウイルス・パンデミック前の水準を上回っているが、求人数は24期連続で、前四半期比で減少している。 こんな風に労働市場が逼迫していると、現職に不満があり、辞めたいと思っても、次の仕事が見つかるかどうかわからない。不安感にかられ、従業員は結局「静かな離職者」になる。
英国の従業員のエンゲージメントレベルの低さは産業革命にある
ロンドンビジネススクールの組織行動学教授、ダン・ケーブル氏は、英国の従業員のエンゲージメントレベルが低い原因を、産業革命によってもたらされた技術、仕事のやり方、官僚的な管理方法にあり、企業によっては依然としてこれらが慣行されていると指摘する。マネージャー層は当時同様、標準化された業績評価基準、インセンティブ、罰則による管理を行っているという。 従業員が何か新しいことを試したり、専門分野を超えて仕事をしたり、スキルを披露したり、自分の働きが最終製品にどのように反映されたかを確認したりといったことをするのは、このような環境下では不可能だという。こうした企業が従業員のエンゲージメントレベルを下げている。 エンゲージメント・コーチ社の創立者でCEOを務めるアムリット・サンダール氏も、ケーブル氏同様、英国のエンゲージメント・レベルの低さは産業革命に起因すると考える。労働時間や労働条件はその後改善されたが、「トップダウン」という当時の考え方は変わらなかった。企業内の階層構造と、国に根付いた社会階級制度のせいだという。 サンダール氏は、従業員が帰属意識を持ち、誰もが機会を平等に与えられ、全員が同じ目的に向かって働いていると実感できて初めて従業員エンゲージメントレベルを改善することができるだろうと予測している。