松澤さんに和歌山県文化賞 メタボ提唱の医学者、田辺市出身
和歌山県は本年度の文化賞に、田辺市湊出身で、生活習慣病の原因究明と対策の研究を長年続け、メタボリック症候群の概念を提唱した医学者、松澤佑次さん(83)=兵庫県宝塚市=を選んだと発表した。表彰式は来年1月10日に県庁である。 【和紙作家の2人に文化賞 奥野佳世さん、誠さんに和歌山県田辺市の記事はこちら】 文化賞は、県が毎年表彰する「文化表彰」のうち、文化の向上発展に顕著な業績があり、県の誇りに値すると認められる人に贈られる。 松澤さんは田辺市東陽中学校、田辺高校、大阪大学医学部を卒業。大阪大学第二内科主任教授や同大学付属病院院長、日本肥満学会理事長などを歴任し、現在は住友病院(大阪市)名誉院長・最高顧問、大阪大名誉教授。本紙「故郷への便り」の寄稿者でもある。2006年に紫綬褒章、15年に瑞宝中綬章を受章した。 松澤さんは1980年代に全身の脂肪組織を分析し、内臓脂肪の蓄積がさまざまな生活習慣病や心血管病の原因になることを突き止めた。その仕組みの解明に取り組む中で、内臓脂肪が蓄積すると、糖尿病や動脈硬化など生活習慣病を抑制する善玉物質「アディポネクチン」が減少することを明らかにした。 2003年には日本肥満学会理事長としてメタボリック症候群の概念と診断基準を発表。内臓脂肪から健康管理する仕組みは、国の健康政策に取り入れられ、特定健診として浸透している。 松澤さんは取材に「生活習慣病は、やるべきことを実行すれば、薬がなくとも予防、改善できる。今回の受賞を機に、このことを県民に知っていただき、和歌山県が健康県と言えるようになればうれしい」と話した。 このほか、県は文化功労賞に、大分県出身の動物生態学者で京都大学名誉教授の堀道雄さん(76)=和歌山市=を、文化奨励賞に和歌山市出身、在住のバイオリン奏者北島佳奈さん(43)と、和歌山市出身の画家田中秀介さん(38)=大阪市=を選んだ。
紀伊民報