「焚書」の映像を通じて歴史の忘却を訴える。DANNY JINと藤井光が新作MV『history』を公開へ
HIPHOPアーティストのDANNY JIN(ダニー・ジン)と美術家・映像作家の藤井光が共同制作した新曲『history』のミュージックビデオが、戦争報道が静まる8月16日午前0時にYouTubeで公開される。 日本人の母とパレスチナ人の父を持ちジンは、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラエル軍による虐殺を受け、昨年からパレスチナについてのラップを発表してきた。新曲『history』では、歴史から学ばずに惨劇を繰り返す「ペンが剣に変わったこの時代」に対して、過去を見つめる重要性を訴えている。 この詩に応答するかたちで、現代美術の分野で記憶と忘却を探求してきた藤井光は、「焚書」に焦点を当てた映像を制作した。今回の映像作品では、1933年のナチス政権による「焚書」を参考に、藤井本人の蔵書やアーティストの呼びかけに応じて寄贈された処分予定の書物を実際に焼却して撮影を行ったという。 集められた書物はダンボール箱80箱に及び、その中で「展示」された焼け焦げた本の断片は、パレスチナ系米国人の英文学者エドワード・W・サイードの『After the Last Sky: Palestinian lives(邦題:パレスチナとは何か)』(1986)を中心に構成されている。 世界では依然として歴史回帰的な戦争や殺戮が繰り広げられており、日本でも歴史や他者の文化的な背景への理解に欠ける問題が続いている。そんななか、ジャンルや世代を超えた2人のアーティストによるコラボレーションを通じ、戦争や歴史、忘却について改めて考えてほしい。