都市部も農村部も「トランプ優位」…歴史的な大接戦後も確実に残る性別・人種・貧富の差による「分断と遺恨」
■両候補支持者の間の驚くほど大きな見解の相違 マスメディア報道への信頼度だけでなく、トランプ支持者とハリス支持者とでは、社会的なものへの価値観がおそろしくかけ離れている。ピューリサーチセンターは4月と8月に行った調査でこの点を明らかにしている(図表3参照)。 図には、文化、法、政策、外交などに関する10個の見解について、賛同する回答率をトランプ支持者とハリス支持者とで比較したデータを掲げた。 社会保障の維持や世界一の軍事力保持に賛同する見解はそれほど大きな回答率の差はないが(といっても後者は20%ポイントの差があるのであるが)、多くの見解で50%ポイントを超える回答率の差がある。 最もポイント差が大きいのは「法を破らず自分を守るのであれば銃をもつことは安全性を増す」という銃器保有に関する見解についてであり、賛同者はトランプ支持者89%と9割近いのに対してハリス支持者は18%と2割を切っている。 次にポイント差が大きいのは「政府にはすべての米国人に保健医療を提供する責任がある」という国民皆保険に関する見解であり、賛同者はハリス支持者91%と9割を超えているのに対してトランプ支持者は32%と3割程度である。 その他、奴隷制の影響、対外オープン(移民・アメリカファースト)、性転換、貧困層援助に関して50%ポイント以上の差が開いている。 米国大統領選をめぐっては最初にふれた顕著な支持層の違いだけでなく、こうした基本的価値観について国民の間の底深い亀裂があらわになっている。 大統領選の結果、いずれにせよどちらかに決まるのであるが、新大統領は、いったい、こうした深刻な米国社会の分断をどう折り合わせて行くのかと途方に暮れるのは遠くから観察している我々よりも当の米国人じたいであろう。 ---------- 本川 裕(ほんかわ・ゆたか) 統計探偵/統計データ分析家 東京大学農学部卒。国民経済研究協会研究部長、常務理事を経て現在、アルファ社会科学主席研究員。暮らしから国際問題まで幅広いデータ満載のサイト「社会実情データ図録」を運営しながらネット連載や書籍を執筆。近著は『なぜ、男子は突然、草食化したのか』(日本経済新聞出版社)。 ----------
統計探偵/統計データ分析家 本川 裕