「悲鳴に近い歓声が…」春高バレーの歴史を変えた“無名の1年生エース”柳田将洋の出現…“天才セッター”関田誠大と悲願の全国制覇
いよいよ、春高バレーの季節がやってくる。 大会を盛り上げてきた名勝負や名選手の数々――無限に広がる記憶の中で、今も色濃く残るシーンがある。 【画像】「めっちゃ若い~!」当時から美しかった天才セッター関田の華麗なトスワーク、会場が揺れた柳田将洋の輝かしい高校時代を見る 2011年1月の第63回大会。男子・準決勝を終えた直後の出来事だ。 「今、大丈夫です。話せますよ」 大会連覇が途絶えた東洋高校のキャプテンは、いつ声をかけようかと気後れしていた報道陣に向け、自ら切り出した。それが当時高校3年生の柳田将洋だった。
「どこの高校が強いとか理解してなかった」
柳田を春高で初めて見たのは2009年。当時はまだ無名の1年生。だが、美しいフォームから強烈なスパイクを放ち、ノーシードから優勝候補を次々と撃破する東洋高の原動力になった。準々決勝でこの大会を制する都城工業高に敗れたが、大会が進むにつれて柳田を囲むカメラの数や記者の数、そしてスタンドの声量はふくらんでいった。 原点となった大会を柳田はこう振り返っている。 「関心がないといえば語弊があるかもしれないですけど、どこの高校が強いとか、理解していなかったんです。だからとにかく目の前の一戦、一戦を必死にやるだけ。まずは初戦を勝つことでめいっぱいだったので、後になってから(都城工のOB、長友)優磨さんから『優勝候補を次々倒してくれたから助かった』と言われたんですけど、僕には全然、そんな意識はなくて。そうだったんだ、って終わってから知りました」 東洋高は翌年の春高でも優勝候補の筆頭に挙げられていた。そして柳田も世代を代表するエースとなった。アイドル顔負けのビジュアルも相まって会場には多くの女性ファンが集まり、スパイクを決めるたび悲鳴に近い歓声が起こる。日本代表の試合かと錯覚するほどの光景だった。 そんな過剰な注目も柳田にとってはプレッシャーにならなかった。大会の主役に相応しい活躍で、柳田は春高バレーで頂点に立った。
天才セッター関田誠大の登場
この優勝にはもう一人、欠かせない存在がいた。1年生セッターとして抜群の存在感を放った関田誠大だ。 もともと互いの親が知り合いだった2人は、幼い頃から仲が良かった。中学こそ別々だったが、関田は柳田のあとを追うように東洋高に進学。「ゲームメイクは関田に任せていた。関田が好きなようにやってくれる中で僕らは打っていただけ」と柳田が当時を振り返っていたように、春高の舞台で関田のトスワークが冴え渡った。 決勝の相手は熊本の名門・鎮西高。関田は第1セットから柳田にトスを集めた。前衛、後衛を問わず、当たり前のようにスコアを重ねる姿はまさにエースそのもの。最初のセットを先取した東洋は第2セットも優位に進めた。 地力のある鎮西も反撃に出る。高校屈指の高さを誇るブロックで応戦して柳田のスパイクを塞ぐと、セット中盤に差し掛かると形勢は逆転した。 エースを封じ込められた状況を打開したのは、関田だった。ライト、ミドルの攻撃を織り交ぜることで鎮西ブロックを翻弄。ブロックが割れたところで、再び柳田にトスを送る。再び逆転した東洋が鎮西を引き離し、第2セットも制した。 第3セットは“柳田劇場”と言わんばかりに柳田が無双した。関田も「自分は上げたいところに上げていただけで、マサ(柳田)が決めてくれたおかげで勝てた」と振り返る活躍ぶりだった。 前年までであれば、2人の春高バレーがこれで終わり。だが、柳田が高校3年生になる年に「春高バレー」の開催時期を1月へ移行することが決定。2人には「連覇」という偉業を成し遂げるチャンスが訪れた。 迎えた2011年1月。第1シードの東洋は順調に駒を進めると、準決勝で再び鎮西と対戦した。 1年前と同じように柳田を中心に攻める東洋に対し、ブロックとレシーブで対応してきた鎮西が第1セットを19対25、第2セットは20対25で連取。追い込まれた状況から東洋は関田のトスワークで蘇り、第3セットは東洋が25対19で取り返し、反撃の狼煙を上げる。 セットカウント1対2、東洋にとっては後がない第4セット、ここで柳田が吠えた。 鎮西が3点リードで迎えたセット終盤、鎮西のエース池田のスパイクを東洋がブロック。昨年大会でも対峙した2人のエースが、互いに点を獲り合う白熱した展開。クールな印象が強い柳田も、「試合前から『絶対に負けない』と意識して臨んだので、試合前もあえて隼平をにらみつけていた」と明かした通り、勝負所でのブロックポイントに大きなガッツポーズで喜びを爆発させた。 しかし、勝利を手にしたのは鎮西だった。
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