アウディ新型A5、生産開始! 持続可能な未来に向けた第一歩
アウディは持続可能な自動車製造に向けた新たな取り組みを進めているが、同社ネッカーズルム工場での新型A5ファミリーの生産開始を皮切りに、2025年までに全生産拠点でのカーボンニュートラル達成を目指すいという。その生産戦略と技術を見てみよう。 アウディは、ネッカーズルム工場で新型A5ファミリーの生産を開始した。この新モデルは、部分的に電動化されたドライブシステムと新しい電子アーキテクチャを採用しており、持続可能な生産を目指した“360ファクトリー”生産戦略の一環を成している。アウディは2025年までに、ネッカーズルム工場を含む全ての生産拠点でカーボンニュートラルを達成することを目指している。 さて、ここでネッカーズルム工場の足跡を簡単に振り返ってみよう。 1873年、自動織機製造会社であるメカーニッシュ・ヴェルクシュタッテ・シュミット&ストールがドイツで設立され、これが後にNSUへと成長して行く。その社名はネッカー川(N)とズルム川(S)の合流する土地、ネッカーズルムに由来したものだ。NSUは自転車からモーターサイクル、そして自動車へと至る、モビリティの発展を体現したかのような企業だった。 第二次世界大戦後、連合国軍の空爆で廃墟と化したネッカーズルム工場を再建しつつ、NSUは人気の高かった自転車とモペットを生産して復興を遂げ、1958年にはコンパクトカー“プリンツ”の生産を開始、自動車の世界に戻ってきた。日本では世界初のロータリーエンジン搭載車“ヴァンケルスパイダー”や“Ro80”を世に送り出し、その技術をマツダに供与したメーカーとしておなじみかも知れない。 しかし未完成の技術が仇となって経営難に陥ったNSUは、1969年にフォルクスワーゲン・グループの傘下に入り、ほぼ同時期に傘下入りした、インゴルシュタットに本拠を置くアウトウニオンと合併。これにより、ネッカーズルムを本社とするアウディNSUアウトウニオンが誕生した。 この新しい会社の下、ネッカーズルム工場ではプリンツなどのNSU車に加えてアウディ100も生産されるようになったが、NSU車は1970年代に段階的に廃止されて行く。1985年にアウディNSUアウトウニオンはアウディと名称を改め、本社をネッカーズルムから現在のインゴルシュタットへ移転。以来、会社とモデルはその名称であるアウディを使用することになり、ネッカーズルム工場もアウディの主要生産拠点として現在に至っている。 今回、新型A5の生産が始まるにあたり、ネッカーズルム工場の歴史上最大の立ち上げフェーズが開始された。今回の生産立ち上げに伴い、アウディは効率的な生産ラインと高度な自動化技術を導入している。特に、2025年に改修完了予定の塗装工場は自動車業界で最も先進的な施設の一つとなるはずで、エネルギー消費が大幅に削減される新技術が採用されている。これにより、車両1台あたり最大140kWhのエネルギーを節約できるほか、新しい乾式分離プロセスにより塗装ミストの再利用が可能になり、さらに約50kWhのエネルギー節約が見込まれている。 また、アウディは水資源の持続可能な利用にも取り組んでおり、ネッカーズルム工場では2025年から新鮮な水の使用量を最大70%削減する計画だ。さらに工場内の自動化を推進し、部品のフィッティング精度が向上、効率的な生産体制を確立している。加えてAR技術を活用した検査手法の導入により、品質管理の精度も向上、迅速な対応が可能となっている。 このように、アウディは持続可能な生産を実現するための革新的な技術を積極的に採用、未来の自動車製造に向けた確かな一歩を踏み出している。その意味でも、新型A5ファミリーは極めて重要な存在となっているのだ。
MotorFan編集部