「タイ首相の後ろ盾」タクシン氏、再び存在感 ミャンマー内戦関与、マレーシア首相の非公式顧問も
【バンコク稲田二郎】タイ元首相のタクシン氏が再び存在感を強めている。次女のペートンタン首相の後ろ盾となりながら、泥沼化する隣国ミャンマー内戦の仲介役を担おうとし、東南アジア諸国連合(ASEAN)の来年の議長国、マレーシアの非公式首相顧問にも就いた。精力的に動く背景には、タクシン派の与党「タイ貢献党」の不人気を挽回する狙いがあるとみられている。 【写真】会見でiPadを見ながら話すペートンタン氏 2001~06年に首相を務めたタクシン氏は、23年8月に国外逃亡を終えて帰国。汚職罪などによる禁錮刑で恩赦を受け、今年2月に仮釈放された。そこから一気に政治活動を本格化させ、復権の道を歩む。 現地メディアなどによると、4月にセター政権(当時)が行った内閣改造では自らに近い人物を入閣させるなど豪腕ぶりを発揮。3月と4月にタイ北部のチェンマイを訪れた際、国軍と戦闘を続けるミャンマーの複数の抵抗勢力と個別に会い、和平の仲介を申し出た。ミャンマー問題を巡っては、隣国カンボジアの前首相であるフンセン上院議長と連携しているとされる。 8月にペートンタン氏が首相に就任すると、すぐに自ら講演会をバンコクで開き、米中など主要国の大使ら約1500人を前に経済政策などを唱えて存在感をアピール。今月16日には、来年のASEAN議長国、マレーシアのアンワル首相の非公式顧問に任命されたことが判明。ASEANではミャンマーの内戦が大きな議題で、タクシン氏は助言の役目を担う。 精力的に動く背景として指摘されているのが、人気の低下だ。23年5月の総選挙では革新を目指す前進党が支持を受けて第1党となり、タイ貢献党は2位。タイ貢献党は民主派の看板を掲げてきたが、前進党ではなく親軍派と組んで政権を取ったため、特に若年層の反発を買っている。 低い支持率のままでは次の総選挙は戦えず、政治学者は現地紙に対し「タイ国内でも関心が高いミャンマー問題などでタクシン氏は自身の評判を回復し、貢献党やペートンタン氏の人気を上げようとしている」と分析。野党議員は「本当の首相は(ペートンタン氏ではなく)タクシン氏だ」と指摘している。
西日本新聞