『マッドマックス:フュリオサ』ジョージ・ミラー監督 人間とは何かへの探究心に突き動かされる【Director’s Interview Vol.406】
オーストラリア人としての民間伝承の思い
Q:『マッドマックス:フュリオサ』は荒廃した未来を描きながらも、現代社会を生きるわれわれに強くアピールする部分をたくさん見つけられます。 ミラー:黙示録的な未来を描きつつ、最初に話したとおり、これはひとつの寓話です。EVの自動車や携帯電話、クレジットカード、冷蔵庫などは存在しません。電力を使えるシステムもないので、人間の基本的な行動、それ自体が純粋に試されます。ですから登場人物の言動は、時代や場所に関係なく、この世界で起こっていることと重ねやすいのでしょう。極端な状況や、紛争を描くことはフィクションのドラマの定番であり、それによって人間と世界の本質が明らかになるのです。そうした物語を積極的に描くのが私の志向であり、うまくいけば映画を観た人たちそれぞれに、何らかのメッセージを発見してもらえるわけです。 Q:そこにあなたが映画を作るモチベーションがありそうですね。今後も映画作りへの野心は消えないのでしょうか。 ミラー:まだまだ意欲は衰えないですね。正直に言うと、このように映画製作が一生の仕事になるとは想像すらしていませんでした。私は好奇心の塊なのだと改めて認識しています。そしてメディアの変化に伴って、物語の役割も変わり続けますから、私は生涯にわたって「なぜ物語を語るのか」と探求し続けられるのです。 Q:その根源に、あなたがオーストラリア人という事実も関わっていたりしますか? ミラー:オーストラリアに住んでいて幸運なのは、長く続く先住民族の文化が身近にあること。おそらく6万5000年の歴史があります。早い時期にひとつの大陸を形成したので、生き物はもちろん、独自の芸術や物語、歌が受け継がれてきたことを、各地の人々と交流によって実感します。そうした民間伝承を伝えるバックグラウンドが、私の映画作りで背中を押してくれる。そんな側面は、たしかにあるでしょう 監督:ジョージ・ミラー 取材・文:斉藤博昭 1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。クリティックス・チョイス・アワードに投票する同協会(CCA)会員。 『マッドマックス:フュリオサ』 5月31日(金)全国公開 配給:ワーナー・ブラザース映画 (C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. IMAXR is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories.
斉藤博昭