本郷和人『光る君へ』「光が強ければ闇も深くなる」道長へ最後の忠告をして安倍晴明はこの世を去り…そもそも彼ら陰陽師の占いに不可欠な<吉兆・凶兆>とは何か
◆独自の発展を遂げた<日本の陰陽道> ただ、吉凶のことを語るのであれば、やっぱり陰陽道、陰陽師でしょう。 陰陽道は、古代の中国で生まれた思想をもとに、日本で独自の発展を遂げた呪術や占術の技術体系なんですね。 オリジナルは中国ですが、それを日本人が得意とする<魔改造>を施したモノ。 日本の陰陽道は、陰陽道と同時に伝わってきた道教の方術(仙人の神通力的なヤツです)に由来する方違(かたたがえ)、物忌(ものいみ)、反閇(へんばい。呪術的な足づかい、歩き方)などの呪術や、土地の吉凶に関する風水説や、医術の一種であった呪禁道なども取り入れ、独自の発展を遂げました。 なお密教の呪法や密教とともに新しく伝わった占星術(宿曜道)や占術の影響も受けています。 そう書くと、もう何でもありですね。
◆様々な場面で吉凶を気にした貴族たち 貴族の日記に良く出てきて、生活に根付いていると思わせる<吉兆・凶兆>が、上記の方違、物忌、反閇です。 古文で習いませんでしたか? 方違というのは、外出または帰宅の際、目的地に特定の方位神がいる場合に、いったん別の方角へ行って一夜を明かし、翌日違う方角から目的地へ向かって禁忌の方角を避ける、といったもの。 貴族は面倒くさがらずに守っていますね。 物忌は斎戒ともいい、ある期間中、ある種の日常的な行為をひかえて、穢れを避けることです。 たとえば、肉食や匂いの強い野菜の摂取を避けたり、他の者と火を共有しないなどの禁止事項を受け入れたりすることです。
◆案外楽しかったのかも しかしあらためて考えてみれば、どれもこれも基本、ゆとりある貴族だからできたことでしょうね…。 こんな具合で、貴族は様々な場面で吉凶を気にしました。それで、陰陽師の活躍の場が広がり、安倍晴明も活躍したわけです。 実際「あっちに行っちゃダメ」「これはしてもいい」と彼らがズバリ言ってくれると、それで生活にメリハリもできて、案外楽しかったのかもしれませんね。
本郷和人
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