近年、「ホールディングス化する企業」が中小大手を問わず増えているワケ【経営コンサルタントが解説】
ホールディングス化で「前時代的なトップダウン型組織」を脱却
続いては、そういった成長戦略を実現するためのグループ組織の在り方について説明する。グループ組織が成長するための考え方は、どうやって「遠心力」を効かせるのか? ということである。遠心力の効いたグループ組織のイメージは、事業会社がその経営者を中心として自律的に生き生きと経営している姿である。 ホールディング経営モデルを絵に描くと、持株会社であるホールディングカンパニーが上で、その下に複数の事業会社が並ぶ構図になりがちである。ただ、そういうトップダウン型の組織はもう古いと言わざるを得ない。むしろホールディングカンパニーが土台としてグループ全体を支え、その上で事業会社が主役として活躍する姿の方が望ましい。こういったホールディングスのことを「プラットフォーム型ホールディングス」と呼んでいる。プラットフォームは直訳すると土台のことである。グループを土台で支え、事業会社の経営に必要なヒト・モノ・カネという経営資源を必要に応じて供給する、そのようなプラットフォームに徹するのが望ましい姿である。 業歴の長い成熟企業はピラミッド型のヒエラルキー組織であることが多い。そして、長い年月をかけて形成されたその秩序は一朝一夕に壊すことができない。一方で、最近創業して成長しているスタートアップやベンチャー企業に共通して見られるのは、現場の社員が主役として生き生きと活躍している姿である。トップと現場の距離感が近く、エンゲージメントの高いカルチャーが形成されている。トップは社員を信じて任せ、社員もまたその期待に応えるべく自律的に行動する。そういったエンパワーメントが高い組織、言い換えれば遠心力の効いた組織が成長しやすいと言える。 ただ、そういった経営を実践しているトップに話を聞くと、実は「最初はトップダウンから始めた」というケースが多い。トップダウン経営だと、トップが指示をすれば組織が動くが、指示をしなくなった途端に組織が止まってしまう。「トップダウンを止めて、社員を信じて任せた瞬間から業績が飛躍的に向上した」。そういった体験をしたことがある経営者は非常に多いのである。 では、ピラミッド組織を壊せない企業はどうやって遠心力経営を取り入れていけば良いのだろうか? そのヒントがホールディング経営にある。 【事例】ホールディングス化でピラミッド組織とティール組織を両立 あるメーカーがホールディングス化してグループ経営にシフトしたケースがある。そのトップが構想するグループ組織のコンセプトは、「ピラミッド組織とティール組織の両立」である。 メーカーである以上、品質を維持して大量生産をするためには組織を一定のルールで統制することが必要だ。ただ、そういった組織カルチャーでは新しい製品や事業を生み出す発想力は芽生えない。故に、そのメーカーの上に新しく作るホールディングカンパニーには開発部門や新規事業部門を配置することで、新たな成長の種を育てていく。そして、その組織はピラミッド的ではなく、階層をなくしたフラットなカルチャーを形成していきたいとそのメーカーのトップは考えている。 新しい会社をつくると、良くも悪くも新しいカルチャーが形成されていく。前述の例はその特性を前向きに捉えているケースと言える。ホールディング経営は建て増し型の組織という言い方もできるが、そうやって新しいカルチャーを形成することで、グループ全体のカルチャーを徐々に変えていくのも一つのやり方である。