MUFG、資産運用のウェルスナビ完全子会社化へ-997億円でTOB
(ブルームバーグ): 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は29日、ロボットアドバイザーによる個人資産運用サービスを提供するウェルスナビを完全子会社化すると発表した。
MUFG傘下の三菱UFJ銀行が、ウェルスナビに対して株式の公開買い付け(TOB)を実施する。TOB価格は1株当たり1950円と28日の終値から84%高い水準。買い付け期間は12月2日から2025年1月20日まで。すでに同行はウェルスナビの株式約15%を保有しており、残りの全株式取得を目指す。取得総額は約997億円となる。
政府は資産運用立国の実現を掲げ、家計の金融資産2100兆円超の半分以上を占める現預金を投資に回すことで、所得増につなげることを目指している。新たな少額投資非課税制度(NISA)が始まるなど個人金融資産の形成に資する付加価値の提供に向け、各金融機関がサービス拡大に乗り出している。
三菱UFJ銀とウェルスナビは2月に資本業務提携を締結。その後、三菱UFJ銀がウェルスナビに出資し、持ち分法適用会社としていた。リテール戦略を巡っては、KDDIとの合弁であるネット証券のauカブコム証券を来年1月末に完全子会社化し、その後に「三菱UFJeスマート証券」へと社名変更することも発表している。
ウェルスナビの10月末時点の預かり資産残高は1兆3386億円。矢野経済研究所によると、日本のロボアドバイザー市場は同残高ベースで2024年度が約3兆円の見込み。新NISAを追い風に30年度には約12兆円を突破すると予測している。
シティグループ証券の丹羽孝一アナリストはリポートで、MUFGによる完全子会社化によってウェルスナビが目指す、個人顧客に対して総合的かつテーラーメイドのアドバイスを中立的な立場から提供する仕組みである「個人向け金融プラットフォーム構想」の実現可能性が高まると指摘。
その上で「MUFGにとって、このプラットフォーム構想が実現すれば、より包括的な『金融版スーパーアプリ』を完成させる確度が高まる」として、「その実現に向けた布石の一つと考えられる」との見解を示した。