あなたにはあなたの良さがある...「他人と比べて悩む人」にキリスト教が示す答え
とかく、私たち人間は不安にとらわれがちです。そんな私たちを、キリスト教はどのように救ってくれるのでしょうか――新刊『あなたは あなたのままでいい とっておきの聖書のことば23』に込められた真意を、聖心会のシスター鈴木とイエズス会の片柳神父が語りあいました。
弱さや失敗も含めて、「あなたは あなたのままでいい」
【片柳】新刊『あなたは あなたのままでいい』のタイトルには、特別な思いを込めました。 キリスト教と聞くと、「悔い改めなければ地獄に落ちる」といって脅かし、改宗を迫る宗教というようなイメージを持っている人もいるかもしれませんが、本来、キリスト教は人を責めるような宗教ではないのです。 人間は「弱さ」を抱えていて、ときに失敗してしまうこともあるけれど、そのことも含めて私たちを受け入れ励ましてくださる。それが、聖書の中でイエス・キリストの説く神様なのです。 この本の中で、最初に聖書の言葉と"放蕩息子の逸話"をご紹介しました。 ――父親は息子を見つけて、憐れに思い、走り寄って首を抱き、接吻した。(ルカ15:20) 放蕩息子は父から財産をもらって都会に出てくるのですが、使い果たしてしまいます。父の財産を無駄にしてしまったことで「自分はもう、息子と呼ばれる資格がない」と思いながらも、情けにすがって助けてもらおうと父のもとへ帰ります。すると父は、何も聞かずに息子を受け入れてくれるという話です。 この逸話が伝えているのは、弱さや失敗も含めて「あなたはかけがえのない大切な私の子どもだ、大切な命だ」と受け入れてくれるのが、神様の愛であるということです。そうした思いを「あなたは あなたのままでいい」というタイトルに込めました。 【鈴木】人間は皆、惨めなところと良いところがあります。人生も、良いときもあれば、苦しいときもあります。日本には「陰と陽」という考え方がありますが、すべてはそのように「対」でできているわけです。 私たちが生きている世界には、朝があり夜があり、山があり海があり、光があり闇があり、そして正しいことと間違ったことがあります。宇宙は「対」が一つのものとして調和しているのに、とかく人間は「陰と陽」を二分して、「陰は悪くて、陽は良い」と考えるから苦悩が始まります。 「苦労は買ってでもせよ」という格言があるように、嫌なことを乗り越えることで人間は成長していきます。与えられた命に感謝をしながら、今起きることを「ありのままに」受け止めていく――。 「あなたのままでいい」ということは、努力をしなくていいということではなくて、苦しみや逆境をバネに成長していくことだと思うのです。陰の部分はだめ、陽の部分だけがいいという思考ではないのですよね。 【片柳】そう。誰だって幸せになろうと思って一生懸命、頑張っています。それでもうまくいかなくて、落ち込んだり、絶望したり――。それでも神様は「大丈夫、そんなに自分を責める必要はない。あなたは、あなたのままでいいんだよ」と赦してくださいます。 失敗を通して成長すると信じ、私たちを待っていてくださるのです。ですから私たち自身も、失敗しても諦めず、自分を赦してあげること。そこから何かを学び、成長していくことが大切です。