あなたにはあなたの良さがある...「他人と比べて悩む人」にキリスト教が示す答え
マザー・テレサが教えてくれた、一人ひとりに宿る「神の愛」
【片柳】私は父が亡くなった後、人生にすっかり迷い、生きるための手がかりを求めてインドに渡りました。子どものころから憧れていたマザー・テレサのところに行けば、なにか手がかりが見つかるかもしれないと思ったのです。 そもそもキリスト教徒でありながら「神の愛」を頭でしか理解していなかったので、体験して、感じてみたいと思っていました。 マザーに初めて会ったその日に、確かに手ごたえがありました。急に訪ねて行って、厚かましくも「会わせてくれ」などといってきた人間を、「よく来てくれた」と大歓迎してくれたのです。まるで聖書の放蕩息子のエピソードのようでした。 この人には愛があり、私は今、無条件に大切にされている。神の愛とはこういうものなのかもしれない、と体感させてもらいました。 それをきっかけとしてマザー・テレサのそばから離れられなくなり、1年余りマザーのもとに留まりました。日々、マザーの施設でボランティアに勤しむ中で、彼女から直接「いっそのこと神父になってはどうか」と勧められて、今があります。 【鈴木】マザー・テレサを通して、神様がお働きになったのですね。 【片柳】はい。マザーとの出会いを通して、私たち人間の心の中に宿る優しさや、温かい気持ち――そこに神様がおられるということがわかったんです。心の中に宿った神様に導かれて、ここまでやってきたといってよいでしょう。 【鈴木】人間は、どんなに辛いときでも、周りに心優しい人が一人でもいてくれれば、乗り越えられるといいますからね。マザー・テレサのように、目の前の一人を心から大切にしていけるよう、自分を訓練していきたいものです。
片柳弘史(イエズス会司祭),鈴木秀子(聖心会シスター)