追悼 ピーコさん 仕事もプライベートも、いつも愛を持って叱ってくれた人。その言葉は私の人生のトリセツです
ファッション評論家としても知られたタレントのピーコさんが9月3日、敗血症による多臓器不全で死去していたことが発表されました。享年79。ピーコさんと親交のあったコラムニストの山田美保子さんが、思い出を綴ります。第51回「ピーコさんのこと」です。 【写真】ピーコさんとご一緒した思い出の番組 * * * * * * * ◆ピーコさんの訃報 「やだわ~、ワインをこんなになみなみと注ぐ女となんか一緒に居たくないわ~」 20日の夜、ピーコさんの訃報をネットニュースで知りました。報道によれば9月3日、敗血症による多臓器不全で亡くなられたとのこと。享年79。葬儀は近親者のみで済ませたそうです。 2021年には事務所を閉鎖され、2023年6月からは施設に入所。その後体調が思わしくなく入院されていたといいます。喪主は双子の弟、おすぎさんが務められたそうですが、おすぎさんも認知症を患っており、ピーコさんが亡くなったことを認識できなかったと……。 若い頃、お二人には本当に御世話になっていたのに、連絡もせずに、このような日を迎えてしまったことが悔やまれてなりません。
◆“愛あるお説教” 冒頭の言葉は、四半世紀以上は前のこと。ピーコさんと私は当時ある雑誌の同じページでコラムを担当していて、その編集担当者が度々仕切ってくれた食事会でのことでした。青山学院高等部の正門の向かい側にあった小さなフランス料理店で、ピーコさんのグラスに私が白ワインをお注ぎしたときにピーコさんから放たれた”お説教“です。 おすぎとピーコさんに初めて会ったのは私が22歳のとき。新卒で就いたTBSラジオのキャスタードライバー時代で、その当時も、ピーコさんにはたくさんたくさん叱られました。 “外回り”担当の私たちのちょっとしたことをいつも見てくださっているのです。たとえば外から入れたレポートについて「あれはわかりにくかった」から「もっと真剣にとりかからないと」まで。一度、ピーコさんが「アンタたち、このままじゃ終わっちゃうよ」とキャスタードライバーだけを集めて、お話をしてくださったこともありました。 でも、それらはすべて“愛あるお説教”で、その一言で、おしまい。「前から思ってたんだけど」とか「アンタは、いつもそう」という“おまけ”はなくて、ピーコさんが都度、気づいたことをすぐに、過不足なく口にしてくださるのです。 でも、ピーコさんから言われたことはいつも私の心にストンと落ちて、そのすべては人生のトリセツのように残っているのです。もちろん私はあれ以来、自分のグラスにさえワインをなみなみと注ぐことはしなくなりました。