農協に激震…!農林中金「1兆5000億円のとんでもない赤字」リーマンよりヤバい「海外投資で大失敗」の本当の原因
農協に尻拭いさせて…
外貨資金調達コストに跳ね返る信用格付けの低下を避けたい農中は今回、自己資本増強のため、約1.2兆円規模の追加出資を都道府県レベルの農協組織「信連」などに要請している。リーマンショック後の1.9兆円増資に続く2度目となり、利益還元どころか、運用失敗の尻拭いまで迫られる農協側からは「泣きっ面にハチだ」との恨み節も漏れる。 奥理事長は前回の増資時、担当部長として全国の農協団体を説得して回った経緯があるだけに、再びの失策に経営責任を問う声も出ている。だが、農中は最初に5000億円の巨額損失見通しを公表した5月22日当日、奥理事長を含む理事7人の再任を発表しており、それが農協関係者の反発に拍車を掛けているようだ。 とはいえ、JAグループが今後も農中の稼ぎに期待するしかないのも事実で、結局、2度目の増資を引き受けざるを得ないだろう。これまで農協の経済事業の赤字を穴埋めしてきたもう一つの柱である保険販売などの共済事業が、過度なノルマによる職員の「自爆営業」や、高齢者への不適切販売などの発覚でブレーキがかかる中ではなおさらだ。 農中にJAグループの経営を丸ごと背負わせる、無理なビジネスモデルの限界は明らかだ。農業者が減り、融資も含めた農業関連ビジネスが先細る中、JAバンクがせっせと非農業者からも預金を集め、それを農中に回して儲けを増やそうとするシステムそのものの矛盾が露呈した。
農水省と金融庁はどう動く?
海外で巨額投資を続けてきた農中を巡っては、かねて経営危機に陥った場合、国際金融システム不安を引き起こすリスクが懸念されてきた。 実際、リーマン後の巨額損失時には、公的資金注入による実質国有化が水面下で検討された。2022年には農水産業協同組合貯金保険法が改正され、金融システムに著しい混乱が生じると予想される場合には公的資金を注入できる仕組みが正式に整えられたが、そんな事態になれば、農協も一蓮托生で生き残れなくなるだろう。 農中を共管する農水省と金融庁は「連携して経営を注視していく」とアピールしている。だが、両省庁はすでに農中の経営管理委員として皆川芳嗣元農水次官(1978年旧農林省)と、佐藤隆文元長官(1973年旧大蔵省)を送り込んでおり、事態を静観するだけでは単なる「天下りポスト目当て」とのそしりを免れない。 リーマン時に続く巨額損失ショックの再来を奇貨として、農中とJAグループの歪な関係そのものにメスを入れる必要がある。
週刊現代(講談社)