震災後復帰戦0-7記録大敗にも熱い声援。コンサドーレ札幌が抱く覚悟と決意
希望を打ち砕く川崎フロンターレのゴールが次々と決まっていく。大量3失点を喫して前半を折り返した時点で、北海道コンサドーレ札幌史上初のJ1での4連勝の可能性がほぼ潰えた。後半にも無情の4ゴールを追加され、失点はクラブの公式戦におけるワースト記録に並んだ。 それでも、敵地・等々力陸上競技場のゴール裏をクラブカラーの赤に染めた、ファンやサポーターは一度もブーイングを浴びせなかった。それどころか、先制点を含めて6ゴールに絡んだMF家長昭博(32)のヒーローインタビューをかき消すほどのエールと拍手を、うなだれる選手たちへ送ってくる。 「辛い思いをして来ていただいたのに、彼らに何も残せなかった。そんな状況でも僕たちに勇気とエネルギーを与えてくれたことに、やっぱり胸が熱くなるものがあったので」 試合後の挨拶を終えてもゴール裏のスタンド前から離れようとしなかったFW都倉賢(32)が、胸中に抱いていた思いを明かした。北海道胆振東部地震の発生後で初めて行われた一戦となる15日の明治安田生命J1リーグ第26節。屈辱的な大敗と引き換えに、愛する北海道とともに力強く前へ進んでいく覚悟と決意をコンサドーレは新たにした。 J1が中断する国際Aマッチデーウィークに入り、コンサドーレは4日間のオフを取った。いよいよ突入する終盤戦へ向けて選手たちに英気を養わせ、午前・午後の2部練習での再始動を予定していた6日の午前3時8分に、最大震度7を観測した激しい揺れで叩き起こされた。 すぐにクラブのスタッフが手分けをして、選手やコーチングスタッフ、社員とその家族の無事を確認できた。札幌市西区内にある練習拠点、宮の沢白い恋人サッカー場内の各施設も被害を受けていないことを含めて、クラブの公式ツイッターで6日午前8時前に報告されている。 ただ、道内のほぼ全域が停電する非常事態を受けて、チームは練習を中止して2日間の自宅待機に入ることを決めた。股関節とひざに慢性的な痛みを抱えるミハイロ・ペトロヴィッチ監督(60)は、マンションの12階と地上を階段で昇り降りするのに四苦八苦。真っ暗になる夜間は危険だからと、通訳を兼ねる杉浦大輔コーチ(44)が慌てて懐中電灯を届けに行った。 ほとんどが札幌市内に住む選手たちは、無料通話アプリ『LINE』などを介して近所同士で連絡を取り、お互いに助け合った。たとえばMF稲本潤一(38)のマンションは早々に停電から復旧したこともあって、車で数分の距離に住んでいる都倉は家族で訪ねて風呂を借り、昼食もともに取った。 「一日半も停電するのは人生でも初めてでしたけど、幸いにも水は出ましたし、チームのみんなで力を合わせたおかげで滞りなく生活することができました」 電気が使えるようになり、日常が戻った7日夜までの生活を感謝の思いを込めながら振り返った都倉は、神妙な口調でこう言葉を紡ぐことを忘れなかった。 「もっと、もっと大変な思いをされている方々がたくさんいらっしゃいますので」